白い嘘と黒い真実
「あの、ここはどこですが?私はどうやって助かったんでしょうか?あと、さっきの男性の方は一体誰ですか?」

そして、一つ一つ聞いていけばいいものの、とめどなく溢れ出てくる疑問に気持ちが抑えられず、ついマシンガンの如く質問責めをしてしまう。

「ここはキャンプ場近くにある病院です。どうやら、椎名さんが転落したところを目撃した人がいたみたいで、それから直ぐに救出されてここに運ばれたんですよ」

しかし、そんな私の勢いに動じることなく、落ち着いた口調でゆったりと教えてくれた看護師の話に一瞬面を食らった。


あんな人里離れた山奥で誰かが見ていたとは、とてもじゃないけど考えづらい。
もしかしたら、紗耶本人が私を突き落とした後、誰かに助けを求めてくれたのかもしれない。

もし、そうだとしたら少しは気持ちが救われる気がする。

本気で私を殺そうとしたわけじゃないと、確かな確信が持てそうで。

……というか、持ちたい。

紗耶は本当に私がいなくなればなんて、思っていないと信じていたい。


そうでなければ、私は……。


「椎名さん、大丈夫ですか?どこか具合でも悪いですか?」

すると、次第に意識が深い闇へと沈んでいく中、心配そうな面持ちで顔を覗き込んできた看護師さんの声でふと我に返った私は、慌てて体裁を整える。

「……あ、はい。大丈夫です。少し眩暈がしただけですから」

実際体は全くもって健康体だし、何なら腹の虫もとても活発的だけど、今のこの気持ちを隠すなら具合が悪い方が好都合な気がして。

だから、私はわざと表情を歪ませながら、ぎこちなく笑って見せた。

「それなら少し休んでいて下さいね。あと、先程の男性は警察の方ですよ。あなたの転落状況について詳しく話を聞きたいみたいで」

そう少し固い表情で教えてくれた看護師さんの言葉に、私も思わず顔が引き攣ってしまう。

まさか、ここでも警察のお世話になるとは。

確かに、状況が状況なだけに当然の結果なのかもしれないけど、常習犯でもない限りここまで警察に関わる人間も珍しいのではと改めて思う。

けど、どうせ事情聴取されるなら澤村さんの方が良かったな……。
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