白い嘘と黒い真実
色々と思考を巡らせていく中、ふと辿り着いたある人物。

そんな筈はないと否定したかったけど、この条件に全て当てはまるのはもう彼しかいない事実に、段々と血の気が引いてくる。


「それより、あんたに話があるからこっちに来い」

すると、金髪男の隣で私達の様子を終始静観していたガタイのいい強面の男が突然私の腕を掴み、無理矢理引っ張り出す。

「ちょっ、ちょっと何するんですか!?離してください!警察呼びますよ!?」

言わなくても出来ることなら今すぐにでも通報したい。けど、それが出来ない悔しさに私はせめてもの抵抗にと、大声を出しながら片足に力を込めて悪あがきをして見せる。

「手荒な真似はしたくないんだ。痛い思いをしたくなければ大人しく付いて来い」

けど、強面の男は恐ろしい程冷静さを保っていて、射抜くような鋭い眼差しをこちらに向けると、静かな低い声で私を牽制してきた。

しかし、こっちは命が懸かっているので、そんな脅しに屈するわけにはいかない。

私は男の忠告を無視して、更に大声を出そうと口を開いた瞬間、脇にいた金髪男にすぐさま口を塞がれ、ついでに肩に掛けていたバッグも奪われてしまう。

もはや抵抗する術を全て奪われてしまった私は、暴れようにも骨折した足のせいで身動きが出来ない。

それでも声だけは出そうと必死に試みるも、喉が強く震えるだけで、こもった声が私の体の中で虚しく響く。

それならいっそのこと塞いだ手を噛んでしまおうと口を動かすけど、生憎分厚いハンカチがそれを邪魔して結局は無駄な抵抗に終わる。

そうこうしていると、いつの間にやら道路脇に黒いワゴン車が到着し、私は乱暴に後部座席へと放り込まれてしまった。

それに続き、逃げ道を塞ぐように両脇に男達が乗り込んできて、乱暴に車の扉が閉まる。

その音が、まるで希望の道を遮断された音みたいで、絶望感にただ唖然としていると、車は勢いよく発進してしまった。


もうダメだ。
逃げられない。
何で、私がこんな目に遭わなくてはいけないのだろうか。

ストーカーをされて。

親友から崖に突き落とされて。

挙げ句の果てに拉致までされて。

これが報いだというのなら、おそらく、私はずっと前から過ちを犯していたのかもしれない。
 
一度は疑ったはずなのに、持ち前の性分でそれを見逃したこと。

客観的に考えれば直ぐ気付けたはずだったのに。

全ては、高坂部長を信じてしまったことから始まったんだって。
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