白い嘘と黒い真実
「…………っぐ」
しかし、覚悟していた痛みは訪れることなく、代わりに目の前で銃を構えていた高坂部長の体制が崩れ、蹲るように膝を抑えていた。
一体何が起きたのか。
私はまさかと思い咄嗟に視線を正面へと戻した瞬間、視界に飛び込んできた奇跡に目を大きく見開く。
そこには、拳銃を構えて仁王立ちしている澤村さんの姿。
銃口からは硝煙が上がっていて、先程の発砲音は彼のものであることを物語っている。
そして、その後に続くように遠方から聞こえてくる複数のパトカーのサイレン音が、絶望の淵に立たされた私達を希望の道へと一気に引き戻してくれた。
「高坂真斗。お前を銃刀法違反及び殺人未遂の疑いで現行犯逮捕する」
それから、澤村さんは拳銃を持ったままその場で蹲る高坂部長の元へ近付くと、銃口を彼の頭に向けながら射抜くような鋭い眼差しで静かにそう告げたのだった。