白い嘘と黒い真実




__その後、喫茶店でも長いこと話に耽っていたら気付けば外は暗くなっていて、紗耶と別れた頃にはいい時間となっていた。

久々に彼女と思いっきり余暇を楽しみ、改めて以前と同じ生活が戻ってきた幸福感を身に沁みて感じながらゆっくりと帰路に着く。



「……あ」


すると、家に辿り着いたところで丁度帰宅してきた澤村さんと偶然鉢合い、反射的に鼓動が高鳴り出す。

「澤村さん、お疲れ様です。何だか、こうして顔を合わせるのも久しぶりですね」

あの事件以降、彼とはメッセージで何度かやり取りをしていたけど、直接面と向かって話すのはこれが初めてなような気がして、私は少し急かし気味に松葉杖を付いて彼の元へと近寄る。

「そんなに慌てたらまた転びますよ?」

そんな私を呆れながらも穏やかな目で見てくれる彼の視線が嬉しくて、私はほんの少しだけ彼との距離を縮めた。

「澤村さんもあれから大変でしたね。それに拳銃……使いたくないって言ってたのに、ごめんなさい」

それから、私のせいではないけど、何処か罪悪感が否めなくて思わず頭を下げる。

「本当にまさか自分が警察人生において現場で使うことになるとは思わなかったですよ。……でも、お陰で今度のボーナスは上がりそうなので。やっぱり、椎名さんのジンクスは今でも健在ですね」

そうやんわりと微笑みながら皮肉を言う彼に、私は若干の不満を感じながら不服な目で見上げる。
けど、こうして彼のメリットに繋がるなら、それはそれで結果オーライなのではと。
何だか複雑な気分に駆られて眉間に皺が寄った。


「そういえば、澤村さんって夕飯はまだですか?」

何はともあれ、腕時計を見ると時刻はまだ七時前なので、もしやと思い今度は期待を込めた目を彼に向ける。

「いえ、今日は外で済ませてきました」

しかし、その期待も虚しく、あっさりと返答してきた彼の言葉に、私は思いっきり項垂れてしまう。


そうこうしてると、あっという間に家の扉の前まで到着してしまい、これ以上彼を引き止める理由がなくなってしまった私は物悲しい気持ちになりながら鞄から鍵を取り出した。
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