白い嘘と黒い真実
__翌朝。
一足早く起きた私は自分の部屋に帰ってからシャワーを浴びると、家からいくつか材料を持ち出し、早速朝食の準備に取り掛かる。
その合間に、寝室からアラームが聞こえ、数分後には軽く寝癖立った彼が起きてきてた。
「聖君おはよう。ご飯今から作るからね」
眠気眼を擦る姿を見るのはこれで二度目だろうか。
やはり何度見ても無防備な姿が普段とのギャップを感じ、その可愛らしさに私はこっそり悶える。
それから、昨日を境に私達は呼び方を変え、敬語で話すことも止めた。
というか、行為を重ねていくうちに自然とそうなったと言った方が正しいのだろうか……。
「ありがとう。てか、ゆっくり寝ててよかったのに。まだ完治してないだろ。それに、昨日はちょっと無理させちゃったし……」
昨日の出来事を思い出し、一人で照れていると、不意に彼の気配が直ぐ近くで感じられた途端、腰に手を回され肩に顔を埋めてきた。
まさか朝一で甘えてくるとは思いもよらず。未だ彼の変貌っぷりに思考が追いついていけない私は、歓喜の叫びが外に漏れないよう必死に堪える。
「だ、だって聖君朝早いんだもん。目が覚めて側に居なかったら悲しいでしょ?」
兎に角、興奮する気持ちを落ち着かせようと。
私は胸に手をあてながら小さく深呼吸をして、ぽつりと胸の内を明かした。
「……ん。真子、可愛すぎ」
すると、ようやく冷静さを取り戻してきたのに、またもや予期せぬ聖君の頬キスのお陰で、私の心臓は先程よりも更に激しく暴れ始める。
加えて、甘い声で下の名前を耳元で囁かれると、その破壊力は凄まじく、連続で与えられる刺激にもはや立っていることもままならなくなってきた。
距離が縮まって以降、これまで私に対する態度はかなり柔らかくなったと思っていたけど、そこから更に進展すると想像以上の甘さを見せてきて、何だか別人なのではと思えてくる。
出来ることならこのままずっとくっ付いていたいけど、今日も彼は仕事なので、程なくしてから浴室へと向かってしまった。
暫くすると、洗面所から綺麗に髪がセットされたスーツ姿の聖君が出てきて、そこから凛々しい刑事としての顔付きに変わる。
やはり仕事モードの彼も眩しいくらいに輝いて見えて、とても格好良くて、先程からずっと鼓動が鳴りっぱなしだ。