白い嘘と黒い真実

「見て紗耶!彼氏から初めてブランド物のピアス貰っちゃった!凄くない!?」

午前中の業務が終わり、ようやく待ちに待ったお昼休憩となり、私は食堂でお弁当を広げながら、隣に座る同僚に早速昨日貰った誕生日プレゼントの自慢をしてみる。

「まあ、あんたの彼氏同じ派遣だから、そう考えたら凄いのかな?てか、そろそろ収入安定した所に勤めてくれないと不味くない?」

しかし、興奮する私とは裏腹に、とても冷めた表情でサンドイッチを頬張りながら紗耶はジト目でこちらを見てきた。

「なんか、最近始めた副業の稼ぎが好調なんだって。今度のデートも銀座にある焼肉店に連れてってくれるみたい」

けど、それは毎度のことなので、私は特に気にすることなく、携帯カメラを起動して画面越しで上機嫌に身に付けたピアスをまじまじと見つめる。

「何それ?あんた、またヤバいのに引っ掛かってない?元カレに結婚詐欺でいくらかお金取られたばっかりでしょ」

そんな私を今度はとても訝し気な目で見てきた紗耶の痛烈な一言に、私は思わず顔を顰めてしまった。

「健君はそんな人じゃないから!それに、今までで一番私を愛してくれているし、優しくて凄く献身的なんだよ。そんな人が悪い事するわけないじゃんっ!」

確かに、騙された経験のある私を心配する彼女の気持ちはよく分かる。
けど、私のことを第一に思って大切にしてくれている彼のことを悪く言われるのには我慢出来なかった。

だから、職場であるにも関わらず、つい声を張り上げて反論してしまい、後からふと我に返った私はバツが悪くなって身を縮こまらせる。

「とりあえず、世間的に見ても急に羽振りが良くなるのは絶対に裏があるのよ。真子も良い歳なんだから、いい加減その能天気な田舎育ちの考え方は改めて、もう少し人を疑うことを覚えなさい」

すると、紗耶は呆れたように深い溜息を吐いてから尚も耳が痛くなるような話をしてきたので、私はとりあえずこれ以上反論することは止めて素直に頷くことにした。
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