白い嘘と黒い真実
これはいわゆる運命の人なのだろうか。
これ程までの縁があるなら、そう断言しても誰にも文句は言われないと思う。

けど、そんな人からきっぱりと生理的無理発言をされたら、それは果たして成立するのだろうか。

……いや。子供の頃の話をすれば、もしかしたら澤村さんの態度も変わるかもしれない。

そしたら、今よりも友好的になって笑顔も見れるようになれるのかも……。

そんな淡い期待が徐々に芽生え始めていくと、私は軽い足取りで部屋に続く階段を登る。
そして、扉の前で家の鍵を取り出そうと、鞄の中を漁っていた時だった。



「あれ?お隣さん新しい人入ったんだ」

不意打ちのように背後から男性の声が聞こえ、私は思わず肩が小さく跳ね上がり、咄嗟に背後を振り向く。

「しかも、可愛い子じゃん。おい、澤村。何で今まで黙ってたんだよ?」

「言う必要がないから」

すると、視線の先には澤村さんと知らない男性が二人立っていて、しかも澤村さん以外は酔っているのか。ほんのりと赤ら顔で私の顔をまじまじと見てくる。

一人は澤村さんと同じぐらいの若い男性で、目がクリっとした短髪で、これまた爽やかなスポーツマンタイプのイケメン。
もう一人は四十代ぐらいの中年男性で厳格そうな面持ちだ。

三人ともスーツ姿ということは、仕事帰りに飲みにでも行ってたのだろうか。
しかも、二人とも体格がガッチリとしていて、まるでレスキュー隊のような風格を漂わせている。

ということは、この人達も……。

「あ、あの、澤村さん。この方達は……」

余計な詮索だと思うけど、聞かずにはいられない衝動に、私は思わず疑問を口にしてしまう。

「同業者です」

そして、私の質問を最後まで聞く前に澤村さんは即答した。


……やっぱり。 

なんだか三人の警察官に立たれると、健君の逮捕時を思い出してしまい、変な緊張が走った私はつい生唾を飲み込んでしまう。

「あれ?君ってもしかして、この前検挙した受け子の関係者?まさか、あの椎名真子が隣人なわけ?」

そんな中、何やら若い男性の人から改めて顔を凝視された後、さらりと言われた聞き捨てならない最後の台詞に一瞬だけ動きが止まる。

え?ちょっと待って。
“あの”って何ですか??  

それから、喉まで出かかった言葉をすんでのところで飲み込む。
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