白い嘘と黒い真実

なんだろう。
気のせいかもしれないけど、先程から高坂部長私にばっかり話し掛けてくるような……。

紗耶も好きだって言ってる割には全然会話に入って来ないし、照れてるにしては、部長の方を全く見ないし。

隙あらば紗耶にも話題を振って三人で会話をしようと試みても、二人ともそこまで話に乗ってこない。
まるで、お互い関わりを避けているようにも見えて、私は訳が分からず頭の中が混乱し始めた。

「あ、あの。高坂部長って彼女いるんですか？」

それならばと。意を決して思い切った質問をした途端、隣に座っていた紗耶の肩がピクリと小さく動く。

「あー……うん。いるよ」

それから、一瞬だけ困ったような表情を見せた後、直ぐにまた笑顔に戻った高坂部長の衝撃的な一言に、私は思わず持っていた橋を落としそうになってしまった。

「ええ！？そ、そうなんですね！？いつ頃付き合ってたんですか？」

これまで彼はフリーだという噂をずっと信じ続けていたので、予想とは違う返答に軽いショックを受けながらも、勢いに任せて更に踏み込んだ質問をしてみる。

「ちょっと前かな。年下だけど綺麗で大人っぽくて、一緒に居ると落ち着くんだ」

すると、高坂部長は嫌な顔一つせず、とても嬉しそうに答えてくれるので、そこから彼女に対する愛情がひしひしと感じてきた。

「い、良いですねー。私もそんな恋人が欲しいです」

とりあえず、残念な気持ちをなるべく表に出さないように努めながら、私は無理矢理笑顔を作って相槌を打つと、横目で紗耶の様子を伺う。
けど、意外にも平然としていて、私は少し拍子抜けしてしまった。

「そっか……。椎名さん、色々大変だったからね。あれから落ち着いたの？」

なんて、人の事を心配していたら、まさかのあの話を蒸し返されてしまい、油断していた私はしどろもどろになって視線を泳がす。

「え、えと……。はい。もう彼との関わりは完全に断ち切ったので。その節は色々とご心配をお掛けして申し訳ございませんでした」

そして、改めて会社側に迷惑をかけてしまった事に、私は心からのお詫びを示す為、頭を深々と下げた。