白い嘘と黒い真実
◇◇◇
……紗耶も、いよいよかなあ……。
今日も一日の業務が無事に終わり、帰路に着いている間、私は昼間の出来事を振り返り、しみじみとそう感じて茜色の空を見上げる。
これがきっかけで、社内にも公表出来れば、きっと紗耶の結婚話は本格的に進んでいくのだと思う。
そうなれば、それはとても喜ばしいことで、是非とも彼女には幸せになってもらいたいし、結婚式があるなら絶対参加したい。
けど、祝福したい反面少し寂しくもあるような……。
「ダメだぁっ!今は自分磨きに集中っ!」
少しでも油断すると、またもや負の感情が顔を出し始めようとしたので、自分に喝を入れる為につい声を張り上げる。
そこではたと我に返って周囲を見渡すと、通行人から変質者を見るような痛い視線を向けられてしまい、恥ずかしくて死にそうになった私は、足元に視線を向けたまま、そそくさと逃げるようにその場を離れた。
田舎で暮らしていた時は周りに人がいないので、大声で独り言を言っても全然平気だった。だから、もう何年も経つのに未だその癖が抜け切れていない自分を心底呪いながら道を歩いていると、ある物がふと目に止まる。
私は立ち止まって落ちていた物を拾ってみると、それはキーリング付きのチャック式カードケースだった。
見たところ有名なブランド物で白地にピンクの花柄が描かれているから、おそらく落とし主は女性かもしれない。
キーリングには家の鍵が付いてるし、これは早く届けなければと。私はすぐ近くの交番へと急いで駆け込んだ。
「すみませーん、落とし物拾いましたー」
普段は人がいない事が多いけど、今日は運良く人が居て、交番の扉を開き部屋の奥で書類を作成している若い男性警察官に向かって声を掛けた。
「ありがとうございます。……て、あれ?椎名真子さん?」
すると、対応してくれた人はあの時澤村さんと一緒にいた爽やかイケメン警察官で、まさかの偶然の出会いに私は目を大きく見開く。
「あ、あの時はどうも……」
そして、厄介者扱いされたことを思い出し、若干の気まずさを感じながら軽く会釈した。
「こちらこそ。この前は遅くまでうるさくしてすみませんでした」
けど、若い警察官はぎくしゃくしている私とは裏腹に、人懐っこい笑顔を向けると、一先ず差し出したカードケースを受け取り、中を確認し始める。
「えーと……。拾得物はカードケースと家の鍵と千円札一枚と……げっ、マジか。この人マイナカード入れてるじゃん。自殺行為もいいところだろ。変態に拾われたらどうするんだよ」
それから、最後に取り出したカードを目にした途端、思いっきり顔を歪ませた。
……紗耶も、いよいよかなあ……。
今日も一日の業務が無事に終わり、帰路に着いている間、私は昼間の出来事を振り返り、しみじみとそう感じて茜色の空を見上げる。
これがきっかけで、社内にも公表出来れば、きっと紗耶の結婚話は本格的に進んでいくのだと思う。
そうなれば、それはとても喜ばしいことで、是非とも彼女には幸せになってもらいたいし、結婚式があるなら絶対参加したい。
けど、祝福したい反面少し寂しくもあるような……。
「ダメだぁっ!今は自分磨きに集中っ!」
少しでも油断すると、またもや負の感情が顔を出し始めようとしたので、自分に喝を入れる為につい声を張り上げる。
そこではたと我に返って周囲を見渡すと、通行人から変質者を見るような痛い視線を向けられてしまい、恥ずかしくて死にそうになった私は、足元に視線を向けたまま、そそくさと逃げるようにその場を離れた。
田舎で暮らしていた時は周りに人がいないので、大声で独り言を言っても全然平気だった。だから、もう何年も経つのに未だその癖が抜け切れていない自分を心底呪いながら道を歩いていると、ある物がふと目に止まる。
私は立ち止まって落ちていた物を拾ってみると、それはキーリング付きのチャック式カードケースだった。
見たところ有名なブランド物で白地にピンクの花柄が描かれているから、おそらく落とし主は女性かもしれない。
キーリングには家の鍵が付いてるし、これは早く届けなければと。私はすぐ近くの交番へと急いで駆け込んだ。
「すみませーん、落とし物拾いましたー」
普段は人がいない事が多いけど、今日は運良く人が居て、交番の扉を開き部屋の奥で書類を作成している若い男性警察官に向かって声を掛けた。
「ありがとうございます。……て、あれ?椎名真子さん?」
すると、対応してくれた人はあの時澤村さんと一緒にいた爽やかイケメン警察官で、まさかの偶然の出会いに私は目を大きく見開く。
「あ、あの時はどうも……」
そして、厄介者扱いされたことを思い出し、若干の気まずさを感じながら軽く会釈した。
「こちらこそ。この前は遅くまでうるさくしてすみませんでした」
けど、若い警察官はぎくしゃくしている私とは裏腹に、人懐っこい笑顔を向けると、一先ず差し出したカードケースを受け取り、中を確認し始める。
「えーと……。拾得物はカードケースと家の鍵と千円札一枚と……げっ、マジか。この人マイナカード入れてるじゃん。自殺行為もいいところだろ。変態に拾われたらどうするんだよ」
それから、最後に取り出したカードを目にした途端、思いっきり顔を歪ませた。