白い嘘と黒い真実
確かに、拾ったのが私だからまだ良かったものの、万が一泥棒や変質者に拾われたら、顔写真付きでどうぞ入ってくださいと言ってるようなものだ。

私も気をつけよう……。

そう思いながら、面前で落とし物の確認が終わると、警察官は受付の脇に置いていたB5サイズの紙を取り出し、私の前に差し出した。

「差し支えなければ住所と名前書いて貰えますか?あとは所有権と報労金……つまり、保管期間満了後に個人情報以外の物を貰える権利と、落とし主が現れた場合にお礼を受け取る権利が発生しますけど、どうします?」

見てみると、上には連絡先記載欄と、その下には色々な質問事項が書かれていて、私は警察官の説明を聞きながら、“はい”か“いいえ”に丸を付けていく。

他にも、落とし主が現れた場合、私の連絡先を教えてもいいかどうかとか、落とし主に無事返還出来た場合の連絡は必要かなど。

落し物を受理されると色々確認されるんだと思いながら、私は全ていいえに丸を付けて、受付票を警察官に渡した。

「ありがとうございます。これで受理しますね。預かり書は必要ですか?」

どうやら、これらの情報をパソコンに入力した後控えのような書類が出るとの事だったので、時間もあるし、折角だからそれだけは受け取ろうと。私は手続きが終わるまで受付前で待つことにした。


「あれからどうです?聖に意地悪されてないですか?」

その間暇を持て余していると、不意に持ち出された澤村さんの話題に、私は思わず肩がぴくりと小さく震えた。

「い、いえ!滅相もない!寧ろ、色々お世話になってます。この前も酔い潰れた私を部屋の中まで運んでくれましたし……」

そして、あまり思い出したくはなかったけど、澤村さんに迷惑を掛けていることはしっかり伝えねばと。私は恥ずかしさで押しつぶされそうになるのを堪えながら、あの出来事をぽつりぽつりと伝えた。

「え?もう部屋に入ったの?いつの間にそんな関係に?あいつ全く女気ないくせに、本当そういう所あるんだよなー」

すると、何やら最後の台詞がとても気になるところではあるけど、話が変な方向へ進もうとしているので、私は全身が熱くなりながら全力で首を横に振る。

「ち、違いますよ!あの時は友人も居ましたし、澤村さんは私をベッドに置いたらさっさと帰ったそうですし、相変わらず澤村さんに避けられてますし……」

それから誤解を解こうと躍起になっていると、一向に心を開いてくれない彼に再び寂しさが混み上がってきて、段々と意気消沈してきた。
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