白い嘘と黒い真実
◇◇◇
__翌日。
朝起きてテレビを付けながら身支度をしていると、丁度昨日の銀行強盗事件がニュースで流れ、私は動かしていた手を止めてじっとモニターを眺める。
それから、画面は昨日の犯人二人組が護送されていくシーンへと切り替わり、自分もその被害現場に居合わせていた事が未だ不思議に思えてくる。
あの後澤村さんは犯人達をどうしたんだろう。
もしかして私の時みたいに、あの人を突き刺すような冷たい目で取り調べをしていたのかな……。
そんなことをぼんやりと考えながら、ようやく出勤準備が整い終えると、テレビを消して戸締りと火の元を確認してから家の扉を開ける。
「…………あ」
すると、ほぼ同じタイミングで澤村さんも家から出てきて、目が合った瞬間、全身が一気に熱くなり私はその場で固まる。
「おおお、おはようございますっ!」
暫く経った後ようやく頭が回り始めると、とりあえず朝の挨拶をしなければと言葉を発しようとするも、酔ってもいないのに口が回らなすぎて物凄い挙動不審になってしまった。
「おはようございます」
しかし、そんな私に構う事なく無表情のまま挨拶を返してくれると、昨日のことには全く触れず、部屋の鍵を閉めてから早々に階段を降りようとするので、慌てて彼の後を追いかける。
「あ、あの、昨日はお疲れ様でした。あのタイミングで澤村さんが来てくれて本当に助かりました」
そして、改めてお礼を言いたくて、私は深々と頭を下げた。
「これが仕事なので」
やはり、予想していた通りの素っ気ない態度に若干傷付きながらも、彼に追いつこうと急いで戻り私も部屋の鍵を閉めると、駆け足で階段の方へと向かう。
「あれから犯人達の取り調べをしたんですか?」
「俺は他係なので、後は専門の係に引き継ぎました」
余計な質問である事は重々承知の上だけど、もっと会話を続けたくて、私は笑顔で思い付いた話題を引っ張り出すと、澤村さんはこちらを見ることなく一瞬で話を終わらせた。
……私の努力……。
せっかく会話を広げようとしたのに、またもや澤村さんから強制終了されてしまい、今日も上手く交流が出来ないことについ肩が下がってしまう。
……というか、澤村さんからも少しは労いの言葉があってもいいような気がするんだけど……。
“大丈夫でしたか?“とか、“怪我しなくて良かったですね“……とか。
まあ、私自ら首を突っ込んだことだから、そんな言葉を掛けられると若干心が痛むけど……。
それはさておき、私が嫌だという前に、基本的な人とのコミュニケーションがなっていないような……。
なんて。昨日あれ程澤村さんをリスペクトしていたくせに、変わらない辛辣な態度に沸々と不満が募り始めていく。
__翌日。
朝起きてテレビを付けながら身支度をしていると、丁度昨日の銀行強盗事件がニュースで流れ、私は動かしていた手を止めてじっとモニターを眺める。
それから、画面は昨日の犯人二人組が護送されていくシーンへと切り替わり、自分もその被害現場に居合わせていた事が未だ不思議に思えてくる。
あの後澤村さんは犯人達をどうしたんだろう。
もしかして私の時みたいに、あの人を突き刺すような冷たい目で取り調べをしていたのかな……。
そんなことをぼんやりと考えながら、ようやく出勤準備が整い終えると、テレビを消して戸締りと火の元を確認してから家の扉を開ける。
「…………あ」
すると、ほぼ同じタイミングで澤村さんも家から出てきて、目が合った瞬間、全身が一気に熱くなり私はその場で固まる。
「おおお、おはようございますっ!」
暫く経った後ようやく頭が回り始めると、とりあえず朝の挨拶をしなければと言葉を発しようとするも、酔ってもいないのに口が回らなすぎて物凄い挙動不審になってしまった。
「おはようございます」
しかし、そんな私に構う事なく無表情のまま挨拶を返してくれると、昨日のことには全く触れず、部屋の鍵を閉めてから早々に階段を降りようとするので、慌てて彼の後を追いかける。
「あ、あの、昨日はお疲れ様でした。あのタイミングで澤村さんが来てくれて本当に助かりました」
そして、改めてお礼を言いたくて、私は深々と頭を下げた。
「これが仕事なので」
やはり、予想していた通りの素っ気ない態度に若干傷付きながらも、彼に追いつこうと急いで戻り私も部屋の鍵を閉めると、駆け足で階段の方へと向かう。
「あれから犯人達の取り調べをしたんですか?」
「俺は他係なので、後は専門の係に引き継ぎました」
余計な質問である事は重々承知の上だけど、もっと会話を続けたくて、私は笑顔で思い付いた話題を引っ張り出すと、澤村さんはこちらを見ることなく一瞬で話を終わらせた。
……私の努力……。
せっかく会話を広げようとしたのに、またもや澤村さんから強制終了されてしまい、今日も上手く交流が出来ないことについ肩が下がってしまう。
……というか、澤村さんからも少しは労いの言葉があってもいいような気がするんだけど……。
“大丈夫でしたか?“とか、“怪我しなくて良かったですね“……とか。
まあ、私自ら首を突っ込んだことだから、そんな言葉を掛けられると若干心が痛むけど……。
それはさておき、私が嫌だという前に、基本的な人とのコミュニケーションがなっていないような……。
なんて。昨日あれ程澤村さんをリスペクトしていたくせに、変わらない辛辣な態度に沸々と不満が募り始めていく。