白い嘘と黒い真実
……私が呼ぶ人?

確かに、これまで幾度となく不運な出来事に遭ってきたけど、澤村さん曰く、それは全部私自身が招いているということなの?
そんな激しく不必要な神通力が私に備わっているとでも?

まるで厄病神にでもなった気分になり、段々とショックが大きくなってきた私は足に力が入らなくなってきて、階段の手摺に捕まりながら思わずその場でしゃがみ込む。


澤村さん、酷いです。
確かに、この運の無さには昔から悩まされていたけど、そんなはっきり言わなくてもいいのでは?

幾らあんなキラキラした目を向けてきたとしても。
あんな爽やかスポーツマンみたいな眩しい笑顔を振りまいたとしても。
普段の冷たいイメージとは一変して、笑った澤村さんって少し少年のようなあどけなさが残っていて、母性本能くすぐられるなって思わせたとしても………。

……。

…………。


やばい!澤村さんの笑顔の破壊力半端ない!
てか、普段とのギャップがエグ過ぎて心臓もたない!
あの顔で“幸運の女神”なんて言われたら、やっぱり嬉し過ぎるっ!!

不満を漏らしていたはずなのに、何故だか後になって一気に威力を発揮してきた澤村さんの笑顔。

昨日の凛々しくて勇ましい姿に心を持っていかれたばかりなのに、今日はその逆であんな柔らかい表情を見せてくるとは、殺しにかかってくるのもいいところだ。


「……だ、ためだ。と、とりあえず落ち着こう」

先程から呼吸困難に陥ってしまいそうな程に心臓が激しく暴れるので、一先ず冷静になろうと私は深呼吸を二、三回する。
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