白い嘘と黒い真実
「それより、紗耶はあれから高坂部長と話したの?」
席に着くや否や、私はずっと気になっていた疑問を早速ぶつけてみると、何やらあまり芳しくない表情で紗耶は私から視線を外す。
「それがね、やっぱりまだ秘密にしておきたいんだって。私的にはもう隠す必要もないかなって思うんだけど、彼の中ではまだタイミングを測っているみたいで」
それから、今日は珍しく紗耶も手作り弁当を広げながら、深い溜息を吐いておにぎりを頬張る。
「そうなんだ。何でそこまで頑ななんだろう。まさか、両親から結婚相手を決められたとか?」
何だか何処かで聞いた事があるような気もするけど、嬉しそうに紗耶の話をしていた高坂部長が公表を拒む理由なんてそれぐらいしか思い浮かばず、私は顎に手をあてながら宙を見た。
「それは私も気になったから聞いてみたけど、そうじゃないみたい。ただ仕事の都合上ってことしか教えてくれなかったの……」
そこまで話すと紗耶は突然口を閉ざしてしまい、何か考え込むように視線を自分の手元に落とした。
「……紗耶?どうしたの?」
それから暫くずっと反応がないので、私は心配になり彼女の顔を覗き込むと、唇を噛み締めながら今にも泣き出しそうな紗耶の表情に驚き、目を丸くする。
「なんか、高坂部長私に隠してることがある気がする。たまにこっそり誰かと話してたり、連絡なしに仕事以外で何処かに行ってたりするし。聞いても適当にはぐらかされるし……」
しかも、二人の間でそんな蟠りが出来ていたことを今この場で初めて知り、私は驚きのあまり言葉が直ぐに出てこなかった。
「もしかして、浮気してるんじゃないのかなって最近そう思い始めてきちゃって……」
そして、声を振るわながら胸の内を明かしてきた話の内容に、更なるショックを受けてしまう。
「そ、それはいくら何でも。同棲し始めたばっかりだし、高坂部長私の前で惚気てたじゃん。それにまだ付き合ってそんなに経って……」
いないでしょ。と言う前に、過去に自分も付き合って数ヶ月で別れた実績があることをふと思い出し、そこで思わず言葉を詰まらせてしまった。
けど、あれは不倫だったからそもそも年月なんて関係ないし、紗耶達は真っ当なお付き合いをしているので自分と一緒にしてはいけないと思い直し、再び説得を試みる。
「でも、私から強くアピールして付き合えたわけだし、そもそも愛の重さが私と違うのかもしれない。結婚出来るかもって期待してたけど、実は向こうはあまり乗り気じゃないのかも……。その話をいつかはしたいけど、重たい女って思われたくないから、怖くて出来ないし……」
しかし、紗耶が抱える悩みは予想以上に深く、私も騙された付き合いしかした事ないので上手いアドバイスが思い浮かばす、これ以上何も言えなかった。
結局、私は紗耶の良い相談相手になることが出来ず、ただ話を聞くだけで昼休みは終わってしまい、自分の不甲斐なさを感じながら午後の業務に取り掛かる。
キーボードを叩いている間、横目で紗耶の様子を伺ってみると、特に普段と何も変わらず淡々と仕事をこなしているけど、何処となく表情に影が落ちたままな気がして、私は密かに肩を落とした。
これは、私も彼の動きを注視してみるべきかも。
食堂で話を聞いている間、頭の片隅でそんな考えが浮かんだけど、余計なお節介だと思って一旦は引っ込めた。
けど、このまま紗耶が思い悩んでいる姿を見続けているのは心苦しいので、私はパソコンと睨めっこしながら、密かにそう決意したのだった。
席に着くや否や、私はずっと気になっていた疑問を早速ぶつけてみると、何やらあまり芳しくない表情で紗耶は私から視線を外す。
「それがね、やっぱりまだ秘密にしておきたいんだって。私的にはもう隠す必要もないかなって思うんだけど、彼の中ではまだタイミングを測っているみたいで」
それから、今日は珍しく紗耶も手作り弁当を広げながら、深い溜息を吐いておにぎりを頬張る。
「そうなんだ。何でそこまで頑ななんだろう。まさか、両親から結婚相手を決められたとか?」
何だか何処かで聞いた事があるような気もするけど、嬉しそうに紗耶の話をしていた高坂部長が公表を拒む理由なんてそれぐらいしか思い浮かばず、私は顎に手をあてながら宙を見た。
「それは私も気になったから聞いてみたけど、そうじゃないみたい。ただ仕事の都合上ってことしか教えてくれなかったの……」
そこまで話すと紗耶は突然口を閉ざしてしまい、何か考え込むように視線を自分の手元に落とした。
「……紗耶?どうしたの?」
それから暫くずっと反応がないので、私は心配になり彼女の顔を覗き込むと、唇を噛み締めながら今にも泣き出しそうな紗耶の表情に驚き、目を丸くする。
「なんか、高坂部長私に隠してることがある気がする。たまにこっそり誰かと話してたり、連絡なしに仕事以外で何処かに行ってたりするし。聞いても適当にはぐらかされるし……」
しかも、二人の間でそんな蟠りが出来ていたことを今この場で初めて知り、私は驚きのあまり言葉が直ぐに出てこなかった。
「もしかして、浮気してるんじゃないのかなって最近そう思い始めてきちゃって……」
そして、声を振るわながら胸の内を明かしてきた話の内容に、更なるショックを受けてしまう。
「そ、それはいくら何でも。同棲し始めたばっかりだし、高坂部長私の前で惚気てたじゃん。それにまだ付き合ってそんなに経って……」
いないでしょ。と言う前に、過去に自分も付き合って数ヶ月で別れた実績があることをふと思い出し、そこで思わず言葉を詰まらせてしまった。
けど、あれは不倫だったからそもそも年月なんて関係ないし、紗耶達は真っ当なお付き合いをしているので自分と一緒にしてはいけないと思い直し、再び説得を試みる。
「でも、私から強くアピールして付き合えたわけだし、そもそも愛の重さが私と違うのかもしれない。結婚出来るかもって期待してたけど、実は向こうはあまり乗り気じゃないのかも……。その話をいつかはしたいけど、重たい女って思われたくないから、怖くて出来ないし……」
しかし、紗耶が抱える悩みは予想以上に深く、私も騙された付き合いしかした事ないので上手いアドバイスが思い浮かばす、これ以上何も言えなかった。
結局、私は紗耶の良い相談相手になることが出来ず、ただ話を聞くだけで昼休みは終わってしまい、自分の不甲斐なさを感じながら午後の業務に取り掛かる。
キーボードを叩いている間、横目で紗耶の様子を伺ってみると、特に普段と何も変わらず淡々と仕事をこなしているけど、何処となく表情に影が落ちたままな気がして、私は密かに肩を落とした。
これは、私も彼の動きを注視してみるべきかも。
食堂で話を聞いている間、頭の片隅でそんな考えが浮かんだけど、余計なお節介だと思って一旦は引っ込めた。
けど、このまま紗耶が思い悩んでいる姿を見続けているのは心苦しいので、私はパソコンと睨めっこしながら、密かにそう決意したのだった。