白い嘘と黒い真実
「とりあえず、楽しんできてよ。椎名さんはお持ち帰りされないように気を付けてね」
すると、何処となく不安げな表情で“お持ち帰り”なんて言われてしまい、恥ずかしくなった私は戸惑いの目で彼を見返す。
「え、えと。それは絶対に有り得ないので大丈夫ですよ。向こうはその気なんてさらさらないですから」
同期の田中さんのことはよく知らないけど、澤村さんがいるなら間違いなくそんな流れなんて起こるはずもないので。
……と、心の中で付け足しながら、きっと冗談半分なんだろうなと思いながら、一先ず笑ってみせる。
「分かんないよ?だって、こんなに可愛いんだもん。俺なら本気で口説きたくなるかも」
それなのに、高坂部長は突然真剣な目で見つめてきた上に欲求不満な心を思いっきり揺さぶるような刺激的な一言を放ち、私は一瞬自分の耳を疑ってしまう。
けど、そんな固まる私にはお構い無しにと。高坂部長は長い指を私の髪の隙間に入れて、ほぐすようにゆっくりと下に滑らせてから、やんわりと微笑む。
「兎に角、あまり油断しちゃダメだよ?」
それから耳元に顔を近付け、甘い低音ボイスでそう囁いた後、私から手を離し、何事もなかったようにその場を立ち去ってしまった。
…………え?何?
今、何が起きたの??
高坂部長が居なくなった後も、私は現実を受け止めることが出来ず、呆然と立ち尽くしたまま彼の後ろ姿をひたすら見つめる。
本気で口説きたくなる?
油断しちゃダメ?
それって、私じゃなくて紗耶に言うべき言葉なんじゃないの??
そして、ようやく思考回路が動き始めた途端、先程部長に言われた言葉を頭の中で反復しては、無数の疑問が湧いてきて混乱してくる。
一方で、私の心臓は素直に反応してしまい、高坂部長の熱い吐息と甘く蕩けるような声がまだ耳に残っているせいで、あれからずっと脈打つ音が体中うるさく響いている。
すると、何処となく不安げな表情で“お持ち帰り”なんて言われてしまい、恥ずかしくなった私は戸惑いの目で彼を見返す。
「え、えと。それは絶対に有り得ないので大丈夫ですよ。向こうはその気なんてさらさらないですから」
同期の田中さんのことはよく知らないけど、澤村さんがいるなら間違いなくそんな流れなんて起こるはずもないので。
……と、心の中で付け足しながら、きっと冗談半分なんだろうなと思いながら、一先ず笑ってみせる。
「分かんないよ?だって、こんなに可愛いんだもん。俺なら本気で口説きたくなるかも」
それなのに、高坂部長は突然真剣な目で見つめてきた上に欲求不満な心を思いっきり揺さぶるような刺激的な一言を放ち、私は一瞬自分の耳を疑ってしまう。
けど、そんな固まる私にはお構い無しにと。高坂部長は長い指を私の髪の隙間に入れて、ほぐすようにゆっくりと下に滑らせてから、やんわりと微笑む。
「兎に角、あまり油断しちゃダメだよ?」
それから耳元に顔を近付け、甘い低音ボイスでそう囁いた後、私から手を離し、何事もなかったようにその場を立ち去ってしまった。
…………え?何?
今、何が起きたの??
高坂部長が居なくなった後も、私は現実を受け止めることが出来ず、呆然と立ち尽くしたまま彼の後ろ姿をひたすら見つめる。
本気で口説きたくなる?
油断しちゃダメ?
それって、私じゃなくて紗耶に言うべき言葉なんじゃないの??
そして、ようやく思考回路が動き始めた途端、先程部長に言われた言葉を頭の中で反復しては、無数の疑問が湧いてきて混乱してくる。
一方で、私の心臓は素直に反応してしまい、高坂部長の熱い吐息と甘く蕩けるような声がまだ耳に残っているせいで、あれからずっと脈打つ音が体中うるさく響いている。