白い嘘と黒い真実
「ああ、もう最悪。私も普段着で来ればよかった」
一先ず案内されたのは掘りごたつ式のお座敷だったからまだ良かったものの、完全に小洒落たイタリアンに行くつもりのスタイルで来てしまい、一人かなり浮いている状態が恥ずかしくなってくる。
一方、紗耶は普段の仕事着と変わらず、シンプルなデザインの薄いブルーのシャツに、黒いパンツ姿という控えめな格好なので、特に違和感がないのがとても羨ましく思う。
「てか、ほぼ初対面の女性連れてこの店選ぶってことは、本当にただの飲み会でしか考えてなさそうだねー」
辺りをまじまじと見ながらそう分析した紗耶の言葉に、私は激しく納得してしまった。
確かに、言っちゃ悪いけど出会い目当てならもっと見栄を張って女性が喜びそうなお洒落なお店を選んでも良かったのかもしれない。
こういう居酒屋も嫌いではないけど、雰囲気は全く感じられないので、これだけで自分が如何に空回りしていたかがよく分かる気がした。
「っあ、どーも。遅くなってごめんねー」
すると、脇から今回の幹事である私服姿の田中さんが爽やかイケメンスマイルで声を掛けてきて、後からスーツ姿の澤村さんが遅れて入って来た。
「お疲れ様です。あの、今日はこの場を設けてくれてありがとうございます。えと、この子は職場の同僚で友人です」
「初めまして。黒川紗耶です。今日はよろしくお願いします」
一先ず私はその場で立ち上がって深くお辞儀をしてから紗耶の紹介へと移り、一通りの挨拶を済ませる。
「あ、初めまして。田中悟こっちは同期の澤村聖。まあ、堅苦しい挨拶はこれぐらいにして、とりあえず先に注文しましょっか」
そう言うと、田中さんは交番の時と変わらず、気さくな態度でこの場を取り仕切る一方、澤村さんは相変わらずの無表情で先程から一言も喋らずに、目礼だけして紗耶の向かいに座った。
「田中さんは私服なんですね。今日はお休みだったんですか?」
てっきり二人とも仕事終わりで来たのかと思っていたので、ちぐはぐな格好に何気なく尋ねてみる。
「ああ。俺は三交代制の交番勤務なんで、今日は泊まり明けで来たんですよ」
そんな私の質問にさらりと答えてくれたけど、つまりは夜勤明け状態で来たということだろうか。
「だ、大丈夫ですか?体辛くないですか?」
私は泊まり勤務の経験がないので実際どれ程大変なのかはよく分からないけど、それなりの体力は消耗しているはずだから、少し心配になってくる。
「三時間くらい仮眠出来たので大丈夫ですよ。それに、次の日は休みなんで飲む時は大体明けの日が多いんです」
たった三時間の仮眠で翌日の夜まで飲めるなんて、なかなかの荒技とは思うけど、彼らにしてみればそれが普通なのだろうか……。
私は疲れを全然見せない田中さんの底知れぬ体力に圧倒されながら、とりあえず、飲み放題付きなので手始めに全員ビールを頼み、後は食べ物を適当に注文しようとメニュー表をテーブルに広げた。
一先ず案内されたのは掘りごたつ式のお座敷だったからまだ良かったものの、完全に小洒落たイタリアンに行くつもりのスタイルで来てしまい、一人かなり浮いている状態が恥ずかしくなってくる。
一方、紗耶は普段の仕事着と変わらず、シンプルなデザインの薄いブルーのシャツに、黒いパンツ姿という控えめな格好なので、特に違和感がないのがとても羨ましく思う。
「てか、ほぼ初対面の女性連れてこの店選ぶってことは、本当にただの飲み会でしか考えてなさそうだねー」
辺りをまじまじと見ながらそう分析した紗耶の言葉に、私は激しく納得してしまった。
確かに、言っちゃ悪いけど出会い目当てならもっと見栄を張って女性が喜びそうなお洒落なお店を選んでも良かったのかもしれない。
こういう居酒屋も嫌いではないけど、雰囲気は全く感じられないので、これだけで自分が如何に空回りしていたかがよく分かる気がした。
「っあ、どーも。遅くなってごめんねー」
すると、脇から今回の幹事である私服姿の田中さんが爽やかイケメンスマイルで声を掛けてきて、後からスーツ姿の澤村さんが遅れて入って来た。
「お疲れ様です。あの、今日はこの場を設けてくれてありがとうございます。えと、この子は職場の同僚で友人です」
「初めまして。黒川紗耶です。今日はよろしくお願いします」
一先ず私はその場で立ち上がって深くお辞儀をしてから紗耶の紹介へと移り、一通りの挨拶を済ませる。
「あ、初めまして。田中悟こっちは同期の澤村聖。まあ、堅苦しい挨拶はこれぐらいにして、とりあえず先に注文しましょっか」
そう言うと、田中さんは交番の時と変わらず、気さくな態度でこの場を取り仕切る一方、澤村さんは相変わらずの無表情で先程から一言も喋らずに、目礼だけして紗耶の向かいに座った。
「田中さんは私服なんですね。今日はお休みだったんですか?」
てっきり二人とも仕事終わりで来たのかと思っていたので、ちぐはぐな格好に何気なく尋ねてみる。
「ああ。俺は三交代制の交番勤務なんで、今日は泊まり明けで来たんですよ」
そんな私の質問にさらりと答えてくれたけど、つまりは夜勤明け状態で来たということだろうか。
「だ、大丈夫ですか?体辛くないですか?」
私は泊まり勤務の経験がないので実際どれ程大変なのかはよく分からないけど、それなりの体力は消耗しているはずだから、少し心配になってくる。
「三時間くらい仮眠出来たので大丈夫ですよ。それに、次の日は休みなんで飲む時は大体明けの日が多いんです」
たった三時間の仮眠で翌日の夜まで飲めるなんて、なかなかの荒技とは思うけど、彼らにしてみればそれが普通なのだろうか……。
私は疲れを全然見せない田中さんの底知れぬ体力に圧倒されながら、とりあえず、飲み放題付きなので手始めに全員ビールを頼み、後は食べ物を適当に注文しようとメニュー表をテーブルに広げた。