白い嘘と黒い真実
「それにしても、椎名さんも可愛いけど黒川さんもめっちゃ綺麗ですねー。彼氏いるのが残念だけど。てか、確かタメだっけ?別に敬語じゃなくてもいいかな?堅苦しいの嫌いなんだよねー」

豪快にビールを一気飲みした後、早速田中さんの絡みが始まり、相変わらずの軽いノリに若干気後れしてしまったけど、特に不快感もないので私は快く承諾をする。

「田中さん何で私なんかと話したいんですか?色々迷惑かけてるのに」

そして、ずっと不思議に思っていたことを、私は何も気にせず正直に尋ねた。

「前に聖から椎名さんの特性聞いたら益々興味湧いてきてさ。交番来てくれた時も案外まともだったから、話したら面白いのかなあーって思って」

そんな私の問いかけに、これまた向こうも遠慮なく悪意のない笑顔で正直に答えてきたので、私はどう反応すればいいのか分からず、とりあえず引き攣り笑いを浮かべる。

一方で、私の特性というフレーズは気になるけど、澤村さんが田中さんに自分の話をしていたことを知り、それだけで胸が高鳴っていくのは、やはり重症だなと改めて実感させられる。

すると、これまで私達の掛け合をずっと黙って聞いていた紗耶が急に吹き出し、小さく笑い始めたので、悔しくなった私は頬を膨らませて彼女を軽く睨んだ。

「……いや、ごめん。田中さんの感想が実直過ぎなのが面白くて。真子、警察署内ではよっぽど変人だと思われてたんだね。でも、そのお陰で澤村さんと会えたわけだから結果的には良かったんじゃない?澤村さん的にはどうなのか知らないけど」

「さ、紗耶!?ちょっと何言ってるの!?」

しかも、何食わぬ顔でさらりと爆弾発言をされてしまい、不意を突かれた私はパニック状態へと陥り、彼らの前で思いっきり動揺してしまう。

「え?なに?もしかして椎名さんって澤村のこと好きなの?」

それから追い討ちの如く、目を輝かせながらこの話に喰らい付いてきた田中さんの核心的な質問によって、窮地に追いやられてしまった。

「ち、違います!それはただ澤村さんの出会えたお陰で変われるきっかけが出来たっていう意味ですから!」

とりあえず、これは本当の話なので、何とか誤魔化しながら私は横目で澤村さんの様子を伺ってみると、特に動じる様子はなく黙々とお酒を飲んでいたので、それはそれで何だか複雑に思えてくる。

「でも、真子は小さい時から澤村さんと繋がっているんだし、これってもう運命的な出会いなんじゃない?」

「は?何それ?初耳なんだけど」

すると、一度収束しかけた話題が紗耶の追撃によって再熱し始め、しかも、今度はどう交わせばいいのか分からずその場で狼狽えてしまう。
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