白い嘘と黒い真実
「小学校の頃一時的に新潟住んでて、その時椎名さんと少し関わってた時があったんだよ。もう殆ど覚えてないけど」
こうして私が言葉を詰まらせている間、突然澤村さんの深い溜息が聞こえ、面倒くさそうに説明する姿に胸がズキズキと痛み出す。
「へえーマジでそんな話あるんだー……。それなら、もう諦めるしかないじゃん。これも何かの縁だし、いっそのこと付き合っちゃえば?」
「お前殺すぞ」
しかも、囃し立てる田中さんに向かって青筋を浮かべながら間髪入れずに拒絶反応を見せられてしまい、もはや心は粉々に砕け、密かに項垂れる。
やはり、未だ澤村さんにとって私は苦手部類に入る人間なのが顕著に表れているようで、分かってはいたけどショックのあまり直ぐに立ち直ることが出来なかった。
「ったく。聖は女に困らないのにここ最近全然彼女作ろうとしないよな。ちょっと前までは絶える事無かったくせに。なんで?」
そんな傷心している最中、田中さんから聞かされた澤村さんの恋愛事情に思わず顔を上げ、彼の方に目を向ける。
「…………別に。今は興味が湧かないだけ」
それから一間置いて、一点を見つめながらポツリと呟いた澤村さんの表情が何処と無く影掛かっているようにも見え、何だか心に引っ掛かるものを感じた。
澤村さんがモテることは想定通りだったし、これまで彼女が絶え間なく居たというのにも納得がいく。
けど、それがパタリと途絶えたのは単に仕事が忙しいからなのか。
それとも、何か別の理由があるからなのか……。
どっちにしても、向こうが恋愛する気がないのであれば結局この恋は一方的なままで、いつまでも運命に期待してはダメなのかもしれない。
そんな事をぼんやりと考えながら、私は改めて今の恋が絶望的だということを思い知らされたようで、小さく溜息を吐いた。
「そういえば、黒川さんの彼氏はよく今日のこと承諾してくれたよね。本当に大丈夫だった?」
すると、何気なく尋ねてきた田中さんの質問に、一瞬私と紗耶の間で空気が凍りつく。
向こうは気を遣ってくれての事なんだろうけど、今の紗耶にとっては少し酷な話なので、私は心配になって彼女の顔色を伺った。
「はい。全然大丈夫でした。大丈夫過ぎて、少しヘコむくらいに」
「でも、高坂部長は紗耶のこと全面的に信用してるし、愛されてるのはよく分かるから気にならないって言ってたよ。だから、興味がなくなったとかそんなんじゃないから!」
やはり傷をえぐられてしまったようで、始めは笑顔で答えていたけど、次第にその表情が曇り始めてきたので、私は即座に間に入り、慌てて今日の事を彼女に伝える。
「……………それ。私には一言も話したことなかったけど」
しかし、そんな私のフォローに対し、紗耶は突然真顔で黙り込んでしまうと、予想に反し、とても不機嫌そうな声でポツリとそう呟かれてしまい、私は面を食らってしまった。
「それならそう言ってくれればまだ安心出来たのに。何で彼は私じゃなくて真子に話したんだろう……」
「そ、それは言うタイミングがなかったんじゃないのかな?それとも本人の前では恥ずかしかったとか?」
しかも、何だか話が不穏な方向へと進もうとするので、思っていたのと違う展開に焦った私は再び二度目のフォローを入れる。
「……あー、なんかそういう感じなんだ。……うん。男女間のことって色々あるよねー」
すると、終始私達のやりとりを黙って眺めていた田中さんが、絶妙なタイミングで横槍を入れてくれたお陰で、私達の変な空気が少しだけ緩和される。
「これも何かの縁だし、もし良ければ話聞くよ。俺、こういう性格だから交番勤務してると結構色々な人が人生相談しに来るんだよね」
そう苦笑いで話してくれる田中さんの言葉に妙な説得力を感じた私達は、暫しの間お互い顔を見合わせてから、事の次第を話すことにした。
こうして私が言葉を詰まらせている間、突然澤村さんの深い溜息が聞こえ、面倒くさそうに説明する姿に胸がズキズキと痛み出す。
「へえーマジでそんな話あるんだー……。それなら、もう諦めるしかないじゃん。これも何かの縁だし、いっそのこと付き合っちゃえば?」
「お前殺すぞ」
しかも、囃し立てる田中さんに向かって青筋を浮かべながら間髪入れずに拒絶反応を見せられてしまい、もはや心は粉々に砕け、密かに項垂れる。
やはり、未だ澤村さんにとって私は苦手部類に入る人間なのが顕著に表れているようで、分かってはいたけどショックのあまり直ぐに立ち直ることが出来なかった。
「ったく。聖は女に困らないのにここ最近全然彼女作ろうとしないよな。ちょっと前までは絶える事無かったくせに。なんで?」
そんな傷心している最中、田中さんから聞かされた澤村さんの恋愛事情に思わず顔を上げ、彼の方に目を向ける。
「…………別に。今は興味が湧かないだけ」
それから一間置いて、一点を見つめながらポツリと呟いた澤村さんの表情が何処と無く影掛かっているようにも見え、何だか心に引っ掛かるものを感じた。
澤村さんがモテることは想定通りだったし、これまで彼女が絶え間なく居たというのにも納得がいく。
けど、それがパタリと途絶えたのは単に仕事が忙しいからなのか。
それとも、何か別の理由があるからなのか……。
どっちにしても、向こうが恋愛する気がないのであれば結局この恋は一方的なままで、いつまでも運命に期待してはダメなのかもしれない。
そんな事をぼんやりと考えながら、私は改めて今の恋が絶望的だということを思い知らされたようで、小さく溜息を吐いた。
「そういえば、黒川さんの彼氏はよく今日のこと承諾してくれたよね。本当に大丈夫だった?」
すると、何気なく尋ねてきた田中さんの質問に、一瞬私と紗耶の間で空気が凍りつく。
向こうは気を遣ってくれての事なんだろうけど、今の紗耶にとっては少し酷な話なので、私は心配になって彼女の顔色を伺った。
「はい。全然大丈夫でした。大丈夫過ぎて、少しヘコむくらいに」
「でも、高坂部長は紗耶のこと全面的に信用してるし、愛されてるのはよく分かるから気にならないって言ってたよ。だから、興味がなくなったとかそんなんじゃないから!」
やはり傷をえぐられてしまったようで、始めは笑顔で答えていたけど、次第にその表情が曇り始めてきたので、私は即座に間に入り、慌てて今日の事を彼女に伝える。
「……………それ。私には一言も話したことなかったけど」
しかし、そんな私のフォローに対し、紗耶は突然真顔で黙り込んでしまうと、予想に反し、とても不機嫌そうな声でポツリとそう呟かれてしまい、私は面を食らってしまった。
「それならそう言ってくれればまだ安心出来たのに。何で彼は私じゃなくて真子に話したんだろう……」
「そ、それは言うタイミングがなかったんじゃないのかな?それとも本人の前では恥ずかしかったとか?」
しかも、何だか話が不穏な方向へと進もうとするので、思っていたのと違う展開に焦った私は再び二度目のフォローを入れる。
「……あー、なんかそういう感じなんだ。……うん。男女間のことって色々あるよねー」
すると、終始私達のやりとりを黙って眺めていた田中さんが、絶妙なタイミングで横槍を入れてくれたお陰で、私達の変な空気が少しだけ緩和される。
「これも何かの縁だし、もし良ければ話聞くよ。俺、こういう性格だから交番勤務してると結構色々な人が人生相談しに来るんだよね」
そう苦笑いで話してくれる田中さんの言葉に妙な説得力を感じた私達は、暫しの間お互い顔を見合わせてから、事の次第を話すことにした。