劣化王子(れっかおうじ)
第二話:それ、壁ドンじゃなくて突っ張りです
再会、って言葉に敏感だったこの3年間。
そういう内容の少女マンガを見かければ絶対に買っていたし、読むときは主人公の女の子を自分だと思い、相手のかっこいい男の子もユノに置き換えて……。
「きっとわたしたちもこんなふうに再会するんだろうな」と、ときめくそのストーリーに自分たちを重ねていた。
◇ ◇ ◇
「ただいま……マイハニー」
くっきりした二重まぶた、すっと伸びた鼻筋、形の綺麗な唇。さっき見た顔の中心部には懐かしさを感じた。
でも、
「あ……あの」
頬に当たっているこれは……何ですか。
抱きしめられた瞬間から柔らかい何かがピタッと張りついている。
ウォーターベッドのようなプルプル感。気持ちいい感触だけど、これって……胸?
変わり果てた体のラインにショックを受けていると、
「ねぇ、あの子たち何してんの?」
「さぁ? よくわかんないけど、あの男……すっごいデブじゃない?」
「ぶっ。デブのラブシーンとか見たくないって!」
わたしたちに注目する周囲の声が次々と耳に入ってきた。
「っ! 離してっ」
我に返り、慌てて腕の中からすり抜ける。いきなり力いっぱいお腹を突き飛ばす形になったから、押しのけられた彼は驚いた表情をしていて。
「わ、わたし……向こうで友だちを待たせてるからっ」
これ以上、ここにいたくなかった。
周囲の目も気になるし、変わってしまった彼にどう接すればいいのかもわからない。
だから、返事を待たずに走る。
去り際に「果歩(かほ)ちゃん」とつぶやかれ、わたしは下唇を強く噛んだ。
その言葉ではっきりしたの。彼は本当にユノなんだな、って。
そういう内容の少女マンガを見かければ絶対に買っていたし、読むときは主人公の女の子を自分だと思い、相手のかっこいい男の子もユノに置き換えて……。
「きっとわたしたちもこんなふうに再会するんだろうな」と、ときめくそのストーリーに自分たちを重ねていた。
◇ ◇ ◇
「ただいま……マイハニー」
くっきりした二重まぶた、すっと伸びた鼻筋、形の綺麗な唇。さっき見た顔の中心部には懐かしさを感じた。
でも、
「あ……あの」
頬に当たっているこれは……何ですか。
抱きしめられた瞬間から柔らかい何かがピタッと張りついている。
ウォーターベッドのようなプルプル感。気持ちいい感触だけど、これって……胸?
変わり果てた体のラインにショックを受けていると、
「ねぇ、あの子たち何してんの?」
「さぁ? よくわかんないけど、あの男……すっごいデブじゃない?」
「ぶっ。デブのラブシーンとか見たくないって!」
わたしたちに注目する周囲の声が次々と耳に入ってきた。
「っ! 離してっ」
我に返り、慌てて腕の中からすり抜ける。いきなり力いっぱいお腹を突き飛ばす形になったから、押しのけられた彼は驚いた表情をしていて。
「わ、わたし……向こうで友だちを待たせてるからっ」
これ以上、ここにいたくなかった。
周囲の目も気になるし、変わってしまった彼にどう接すればいいのかもわからない。
だから、返事を待たずに走る。
去り際に「果歩(かほ)ちゃん」とつぶやかれ、わたしは下唇を強く噛んだ。
その言葉ではっきりしたの。彼は本当にユノなんだな、って。