劣化王子（れっかおうじ）
「よかったじゃん。ユノも喜ぶだろ」

「喜んで……くれるかな」

最近のユノを遠く感じているわたしは、伝えたときのことを想像して不安を抱く。

鮎川はそばにきて、うつむくわたしのおでこを拳でコツンと叩いた。

「喜ぶに決まってんだろ」

……鮎川。

「……喜ぶよ」

言い聞かせるように繰り返してくる。

ためらいつつも、うんとうなずくと、鮎川はニカッと歯を見せて笑った。

そんなわたしたちの耳に、チャイムの音。

「あ……しずちゃん」

鮎川と話している間でも、ポケットの中で数回ブルブルと震えていたスマホ。

慌てて画面に目をやると、しずちゃんからのメッセージが数件たまっている。

「さてと、そろそろ帰るか」

読んでいた最中、鮎川も同じように自分のスマホを触り、そばを離れようとしていた。

だけど、

「えっ」

しずちゃんからのメッセージに驚いて声を上げると、鮎川は立ち止まって顔色をうかがってくる。

わたしは戸惑いながら見せた。最後に届いたメッセージを。





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