劣化王子(れっかおうじ)
「オレは身長が伸びてこの体型になった。だから……努力ってもんはしてねぇ」
「……」
「でもユノはちゃんと努力して、ここまで痩せた。……“無理して体を壊してたら何にもなんねぇだろ”って、さっきは呆れてたけど……でも、山咲への気持ちだけでここまで痩せたユノは……男のオレが見ても、やっぱかっけぇよ。……オレは完全に敗けてる」
鮎川の言葉に、途中からうなずけなくなっていた。
似た気持ちを抱いたことがあるからだ。
わたしもよく、自分としずちゃんを比べてしまう。
頭の良さや見た目の綺麗さなど、近くにいればいるほど羨ましくなるから。
だからね、鮎川の気持ちはよくわかるんだ。でも……。
「“勝ち敗けじゃないんじゃない? そういうのは”」
しずちゃんの言葉を借りた。
「ユノはユノ、鮎川は鮎川、でしょ? ユノにあって鮎川にないものがあるんだろうけど、鮎川にあってユノにはないものもあると思う。……鮎川だって十分かっこいいよ!」
“わたしはわたし、果歩は果歩。わたしにないものを、あんたは持ってる”
わたしが羨むたび、しずちゃんは毎回そう言ってくる。
それが何なのかはまだ気づけていないけれど、今の鮎川を見ていて“きっと自分にもあるんだろうな”と思えた。
だって、鮎川もたくさんいいところがあるから。
「知ってる? 鮎川ってうちのクラスの女子から結構モテてるんだよ! たまに聞かれるよ。“鮎川くん彼女いる?”って。……名前は教えないけど、でもホントだよ?」
鮎川とは中2から話すようになったけど、中学の頃はいじわるなことばかり言われていたから、ここまで仲良くはなかった。
高校に入ってからの鮎川は、なんだか別人のように思えてしまう。
それは多分、一緒に過ごす時間が増えたからだ……。
今はからかわれても嫌な気持ちにはならないし……“ユノと鮎川、しずちゃんとわたし”の4人でいるときが結構楽しい。
「だから、自分とユノを比べる必要なんてないと思う! 鮎川もかっこいいんだから!」
オレだって、と胸を張っていてほしい。
いつもの憎たらしい男子に戻ってほしかった。
笑いかけるわたしをじっと見つめていた鮎川は、ため息まじりにつぶやく。
「はぁ……お前のそういうとこ、ホントムカつく」
「え、なんでっ」
怒らせるようなことを言った覚えはないのに、と慌てた。
すると、鮎川は拳で軽く、おでこを叩いてくる。
「ユノのこと頼んだ」
その言葉を置いて、そばを離れてく。
おでこに手を当てながら見つめた、いつもの憎たらしい笑顔。
いつもの彼が、本当に嬉しかった。
「……」
「でもユノはちゃんと努力して、ここまで痩せた。……“無理して体を壊してたら何にもなんねぇだろ”って、さっきは呆れてたけど……でも、山咲への気持ちだけでここまで痩せたユノは……男のオレが見ても、やっぱかっけぇよ。……オレは完全に敗けてる」
鮎川の言葉に、途中からうなずけなくなっていた。
似た気持ちを抱いたことがあるからだ。
わたしもよく、自分としずちゃんを比べてしまう。
頭の良さや見た目の綺麗さなど、近くにいればいるほど羨ましくなるから。
だからね、鮎川の気持ちはよくわかるんだ。でも……。
「“勝ち敗けじゃないんじゃない? そういうのは”」
しずちゃんの言葉を借りた。
「ユノはユノ、鮎川は鮎川、でしょ? ユノにあって鮎川にないものがあるんだろうけど、鮎川にあってユノにはないものもあると思う。……鮎川だって十分かっこいいよ!」
“わたしはわたし、果歩は果歩。わたしにないものを、あんたは持ってる”
わたしが羨むたび、しずちゃんは毎回そう言ってくる。
それが何なのかはまだ気づけていないけれど、今の鮎川を見ていて“きっと自分にもあるんだろうな”と思えた。
だって、鮎川もたくさんいいところがあるから。
「知ってる? 鮎川ってうちのクラスの女子から結構モテてるんだよ! たまに聞かれるよ。“鮎川くん彼女いる?”って。……名前は教えないけど、でもホントだよ?」
鮎川とは中2から話すようになったけど、中学の頃はいじわるなことばかり言われていたから、ここまで仲良くはなかった。
高校に入ってからの鮎川は、なんだか別人のように思えてしまう。
それは多分、一緒に過ごす時間が増えたからだ……。
今はからかわれても嫌な気持ちにはならないし……“ユノと鮎川、しずちゃんとわたし”の4人でいるときが結構楽しい。
「だから、自分とユノを比べる必要なんてないと思う! 鮎川もかっこいいんだから!」
オレだって、と胸を張っていてほしい。
いつもの憎たらしい男子に戻ってほしかった。
笑いかけるわたしをじっと見つめていた鮎川は、ため息まじりにつぶやく。
「はぁ……お前のそういうとこ、ホントムカつく」
「え、なんでっ」
怒らせるようなことを言った覚えはないのに、と慌てた。
すると、鮎川は拳で軽く、おでこを叩いてくる。
「ユノのこと頼んだ」
その言葉を置いて、そばを離れてく。
おでこに手を当てながら見つめた、いつもの憎たらしい笑顔。
いつもの彼が、本当に嬉しかった。