劣化王子(れっかおうじ)
第三話:浴衣、似合いますね
目立つか目立たないかで言えば、目立たないほう。
できるかできないかで言えば、できることもあるけどできないことのほうが多い。
そんなわたしだからね、こういうのは向いてないと思うんだ。
「山咲(やまざき)ぃ! 山咲(やまざき)果歩(かほ)はどこだぁ!」
高速インターで15分のトイレ休憩。
さっきお茶を飲みすぎたから早く行きたいのに、先生の探す声に気付いて足を止める。
「……で、山咲は休憩が終わったら全員をバスに乗せて人数確認!」
「はい」
「勝手に座席を替えた生徒がいないか、このプリントでチェックもしておくこと」
「わかりました」
「それと、この後の予定だが……」
4月の半ば、わたしたち1年生は今日から宿泊オリエンテーション。
親睦を深めることを目的としたこの行事で、わたしは実行委員になってしまった。
「……はぁ。やっと」
「大変だねぇ、実行委員さんは」
先生が去ったあと、離れた場所で待ってくれていたしずちゃんはクスクス笑ってる。
「こういうのホント苦手。なんであのときグーを出しちゃったんだろ」
トイレにはもう長い行列ができていて、ゆっくりする時間はないってことを悟った。
「こういうのは無縁だと思ってたのに……ジャンケンで決めるとか」
「あのときは笑った。8人でジャンケンしてひとりだけグーを出すなんて……やろうとしてもできることじゃないよ、あんなの」
他人事だと思って、しずちゃんは大笑い。
「このわたしが実行委員だなんて。どちらかといえばしずちゃんのほうが向いてるのに……ねぇ、今からでも代わって?」
「勘弁。高校ではもう委員なんてしないから」
「むぅ……」
「それに彼だって、一緒にする相手がわたしだと気に入らないはずだよ?」
中学時代にクラス委員や生徒会にまで入っていた彼女はそう言い、フードコートを指差す。
そこにいるのは、焼きそばを食べているユノだった。
「……」
「彼はこういう委員とか慣れてそうだね」
「まぁ……小学生のときはずっとクラス委員だったし」
ユノは女子の実行委員がわたしだとわかった瞬間、男子の実行委員はもう決まっていたのに、みんなの前で「自分がやりたい」と言いはじめたんだよね……。
「よかったじゃん、いいパートナーで」
しずちゃんは冷やかすようにそう言って、空いた個室に入る。
まだ列に並んだままのわたしは、目が合い手を振ってくる彼に苦笑い。
できるかできないかで言えば、できることもあるけどできないことのほうが多い。
そんなわたしだからね、こういうのは向いてないと思うんだ。
「山咲(やまざき)ぃ! 山咲(やまざき)果歩(かほ)はどこだぁ!」
高速インターで15分のトイレ休憩。
さっきお茶を飲みすぎたから早く行きたいのに、先生の探す声に気付いて足を止める。
「……で、山咲は休憩が終わったら全員をバスに乗せて人数確認!」
「はい」
「勝手に座席を替えた生徒がいないか、このプリントでチェックもしておくこと」
「わかりました」
「それと、この後の予定だが……」
4月の半ば、わたしたち1年生は今日から宿泊オリエンテーション。
親睦を深めることを目的としたこの行事で、わたしは実行委員になってしまった。
「……はぁ。やっと」
「大変だねぇ、実行委員さんは」
先生が去ったあと、離れた場所で待ってくれていたしずちゃんはクスクス笑ってる。
「こういうのホント苦手。なんであのときグーを出しちゃったんだろ」
トイレにはもう長い行列ができていて、ゆっくりする時間はないってことを悟った。
「こういうのは無縁だと思ってたのに……ジャンケンで決めるとか」
「あのときは笑った。8人でジャンケンしてひとりだけグーを出すなんて……やろうとしてもできることじゃないよ、あんなの」
他人事だと思って、しずちゃんは大笑い。
「このわたしが実行委員だなんて。どちらかといえばしずちゃんのほうが向いてるのに……ねぇ、今からでも代わって?」
「勘弁。高校ではもう委員なんてしないから」
「むぅ……」
「それに彼だって、一緒にする相手がわたしだと気に入らないはずだよ?」
中学時代にクラス委員や生徒会にまで入っていた彼女はそう言い、フードコートを指差す。
そこにいるのは、焼きそばを食べているユノだった。
「……」
「彼はこういう委員とか慣れてそうだね」
「まぁ……小学生のときはずっとクラス委員だったし」
ユノは女子の実行委員がわたしだとわかった瞬間、男子の実行委員はもう決まっていたのに、みんなの前で「自分がやりたい」と言いはじめたんだよね……。
「よかったじゃん、いいパートナーで」
しずちゃんは冷やかすようにそう言って、空いた個室に入る。
まだ列に並んだままのわたしは、目が合い手を振ってくる彼に苦笑い。