劣化王子(れっかおうじ)
この3年でユノは大胆な人になった。
朝、ホームで待ち伏せしたり、放課後も一緒に帰ろうとしてくることがある。そばにしずちゃんがいるときは遠慮をしているのか、近寄ってはこないけれど。
小学生時代はもう少し控えめだったよね。
トイレの個室を出て水道のほうへ行くと、先に手を洗い終わった彼女はなぜか真剣な表情で、スマホの画面をじっと見つめていた。
「どうしたの、しずちゃん」
隣に並び、蛇口をひねりながら鏡ごしで様子を伺う。
すると彼女は、
「ううん、なんでもない」
表情を切り替えてパッと明るく笑う。
「……」
「もうそろそろ時間じゃない? 外を見てくるね」
「あ、うん……」
笑顔のままそばを離れてくしずちゃん。
その横顔を目で追うわたしは、ここ1週間の彼女を振り返る。
「……やっぱ変」
最近のしずちゃんはちょっとおかしい。
時々、さっきのように思いつめた表情をしている。
変だなと感じ始めたのは、あの日から。