劣化王子(れっかおうじ)
その後、大広間では4人の先生が予定や注意事項を長々話す。
解散し、部屋に戻ってから30分後に少し早めの夕食。
その片付けもわたしたち実行委員の役目で、そこでもユノはそばに来ようとしてきたけど、わたしはあの子たちの目を気にして、彼を避け続けた。
それから各部屋6人ずつで順番にお風呂。
わたしは同じ部屋のマミちゃんたちと一緒に女風呂へ向かっていた。
「明日の物作りや飯ごうすいさんは楽しそうだけど、明後日はきついよねぇ」
「朝から登山とかスケジュールがハードすぎだよ」
「果歩ちゃん大変そう。実行委員の仕事、結構あるみたいだし」
「うん……もうすでにクタクタだよ」
ホント早く終わってほしい。
「あ、卓球台とかあるんだー」
「なんか楽しそう」
大浴場に着くまでの間で、ゲーム機や自動販売機が並ぶ広い通路があった。
すでに入浴を済ませた他のクラスの男子たちが、そこの卓球台でシリトリをしながら遊んでいる。
「何組だろ?」
「ちょっとカッコよくない? あの茶髪の人」
「わたしはあのメガネの黒髪がいい! クールな感じで!」
ちょっと悪そうで、でもはしゃぐ姿は可愛い。
浴衣もよく似合ってるし、モテる人たちなんだろうな。
少女マンガで言うと、みんなから憧れられるイケメン集団ってところかも。
みんなはもう彼らに夢中だから、しばらくわたしも遊んでいる様子を見てたんだけど、
「ほら、こんなこと滅多にないんだから“握手してください”ってお願いしな」
通路の端のほうから、知らないおばあさんの声がする。
気になって視線を移すわたしは、目に映る光景にきょとんとした。