劣化王子(れっかおうじ)
それから5分ほど歩いて校門の前に立つと、中は騒がしいほどに同じ新入生たちで溢れていた。

今日から通うことになるこの「桜ヶ丘中央高等学校」は、校舎がキレイで、桜の木がたくさんあることが有名なんだ。

わたしたちは校舎の張り紙を見て、クラス分けの用紙が置いてあるという中庭へと足を運んだ。


「果歩! 同じクラス!」

「はぁ、緊張する!
 ユノはもう来てるのかなぁ?」

「……ねぇ、聞いてる? 同じクラスだよ、わたしたち」


きょろきょろと辺りを見渡すわたしの視界をふさぐようにして、しずちゃんが用紙を顔の前に持ってくる。

仕方なく、その人差し指をたどって名前を確認してみたら……。


「わっ!! 同じクラスだ!!」

「ね、嬉しいよね!」

「ユノと同じだなんて!! 運命!!」

「……」

B組の欄の下のほうにあったわたしの名前、「山咲(やまざき)果歩(かほ)」。

その斜め下にはユノの名前「湯前(ゆのまえ)周作(しゅうさく)」という愛おしい4文字が並んでいる。
「やばい。嬉しくて泣きそう!」

「……親友やってるわたしはむなしくて泣きそうだわ」


同じ学校に通えるってことだけでも幸せなのに、クラスまで一緒だなんて。

しずちゃんはなぜか呆れた顔でハンカチを貸してくれる。

じわりと潤んだ目を、それで拭いていたとき……。
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