劣化王子(れっかおうじ)
「ダイエット中だったんだね……ハンバーガー屋に誘ってごめんっ!」
「……え」
わたしが待っていたのは「ダイエットするよ」のひと言だった。
なのに、彼は、
「そのハンバーガー、無理しないでね。代わりに食べるから!」
仏のような笑みでそう付け足してきた。
「……」
なんでわかんないの。
「……っ」
なんで気にしないの。
苛立ちをこらえきれず、わたしは大きな声で言う。
「少しはダイエットしたら!?」
最悪な展開だった。
本当はさりげなく、体型を気にするように仕向けたかった。
わたしも太ったから一緒にダイエットしようよ。そんな言葉まで用意していたんだよ。
こんなふうに傷つける言い方はしたくなかったのに……。
怒鳴ったわたしをびっくりした表情で見つめるユノ。
もう、ここにいたくない。
「……帰るね」
すぐさまカバンを持って店を出た。
呼び止めるしずちゃんの声も無視して、急ぎ足で歩いたの。
わたしはどんどん嫌な子になる。
相手の体型を気にするってだけでも嫌な女なのに、太った人にあんな言い方までして……。
「最低」
自分にそう言って目をぎゅっと閉じる。
そのときだった。
「……!」
後ろから誰かに手首を掴まれたの。
びっくりして振り向くと、そこにいたのは、
「待てっつってんのに……」
大きく肩で息をする鮎川だった。