かすみcassette【完】
閑話 予知者・司優大

司家は、神祇一派のとりまとめ役らしく、いわゆる超能力とか霊感とかいわれるものを強く持った人が時たま生まれた。

本家直系である俺も、一応ながら超常能力があったりする。

それが、『予知者』と呼ばれるもの。

過去にも同じ力を持った人が存在しているから、もともと呼び名はついていた。

文字通り、予め知ることが出来る者という意味。

ただ、未来視や予知夢のように未来に起こる出来事をなんらかの形で知る力ではなく、未来を定める力と言った方が正しい。

予知者が、『こうなる』と決めたら、未来にそのことは起こる。

悪用乱用すれば自身の命にかかわる反動もあると、過去の記録にあった。

俺はこの力を快く思っていない。未来を決められるなんていいじゃないか、と思う人もいるかもしれないけど、正直ついてまわる代償が怖すぎる。

俺が決めてしまったら、他人にも影響することだからだ。

俺が定めてしまったせいで巻き込んで、よくないことに繋がってしまったらと思うと……だから俺はうっかり使ってしまわないように、ひとつのキーワードを決めている。

それを口にした時だけ、俺の意思で『定める』と。

霞湖ちゃんの件で、実は俺はひとつだけそのワードを使った。

これに関しては後悔していない。

俺と霞湖ちゃんがどうなるとかは、わからないし、定めることもする気はない。

國陽が障害は取り除いてくれると言っていたけど、それは司家側の障害であって、水束家側にはまだまだ問題が山積している。

それでも、猪突猛進なほどまっすぐな想いをぶつけてくれる霞湖ちゃんを。

笑顔にするのは、いつか俺でありたいと思った。

< 95 / 114 >

この作品をシェア

pagetop