Labyrinth～愛に迷う～

どうせ１人だし

店に着いて正美達を探した。奥の座敷にいた。

「ごめんねー。」

私を見つけ手招きしながら正美が言った。

「ううん、いいのいいの。気にしないで。どうせヒマなんだから。」

武田くんの方を向いて冗談で

「はじめまして。あれ？誰かと思ったら武田くんじゃない。」

と言ってみた。

「やったね！川島さんだ！来てくれたんだー。」

酔っているらしい。微かに赤い顔をしていた。酒はあまり強くなさそう。

私は生ビールを注文して武田くんの隣に座った。正美の隣には子供がいたからだ。

「武田と飲んだことはないよね？」

「飲んだことないどころかほとんど話したことさえないよね？」

私はそうだよね？という風に武田くんの顔を覗き込んだ。武田くんは微かに笑いながら

「だって川島さんに嫌われてるから、俺。」

と言った。

「私は別に嫌ってないよ。別に何とも思ってないよ。」

「そ。何とも思ってないんだよね。俺のなんてどうでもいいんだよね。」

「突っかかるね。いや、何とも思ってないって言うのはそういう意味じゃなくて･･･」

「だって前に休憩が一緒だった時、俺の前の席には来なかったじゃん。斜め前かなんかに座ってほかの人とは話してるのに俺のことは無視してたよ。」

「えー？そんなことあったっけ？とにかく別に避けてるわけではないし深い意味はなかったと思うけど。誤解だよ」

そんなこと全く記憶になかったけれどあったとしても全く他意はないことをなんとかわかってもらいたくて何故か必死に言った。
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