Labyrinth~愛に迷う~
 4月にしては暖かい夜だった。生温い南風が吹いていた。日中は半袖でいられそうなほど暖かく夜になっても冷え込んでこなかった。

 正美の家のリビングにみんなで集まっていると熱気がこもっていた。

「暑い。」

 武田くんが言いながらシャツを乱暴に脱ぎ捨てTシャツ1枚になった。

 正美は武田くんの傍に脱ぎ捨てられたシャツを拾うとハンガーにかけた。

「まったく男臭いったら。ああ男臭い。男臭い。」

 顔をしかめながらも武田くんに笑いかける。その様子は世話女房そのものだ。

 いやもっとエロティックな感じ。武田くんに男を感じていて「欲しがっている」みたいになまめかしい感じがした。

 正美は武田くんを好きなのだろうと確信した。ただ彼女は自身の気持ちに気付いてしまうのを怖れているような印象。

 武田くんの方からは恋愛感情が全く見えなかったからなんとなく正美が痛々しく感じられた。

 それでも、もしかしたら2人はすでに男女の関係にあるのかもしれない。

 それにしても武田くんは幼稚すぎる。正美が彼を好きだとしたらかなり覚悟がいると思って見ていた。
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