ロマンスにあけくれる



それの意味がわからずぱちくりと瞬きをすると、無自覚は凶器……と、おかしなことを言われた。

無自覚はあざといというのは聞いたことがあるけれど、凶器は初めて聞いた。



「……はあ、なんで振られるんだか」

「歴代彼女さんからは、別れ話が出た時に何か文句言われなかったの?」

「言われてたらすでに是正してる」

「それもそっか」



なんて、駄弁っていたところ。

ブブ、と微かなバイブ音が、机を揺らした。



「あ、ごめんね。親が迎えきたみたい」

「……花穂さんって、送迎してもらってるんだ」

「普段は徒歩なんだけど、今日はちょっと寄るところがあって。都裄くんは?まだ帰らない?」



スマホをしまいながら立ち上がって、いまだ座ったままの都裄くんを見下ろすと。

数秒の沈黙、のち。



「……僕も帰る」


雑にスクバを取って、私の机に置いていた教室の鍵を乱雑に掴んだ。


< 13 / 46 >

この作品をシェア

pagetop