ロマンスにあけくれる
それの意味がわからずぱちくりと瞬きをすると、無自覚は凶器……と、おかしなことを言われた。
無自覚はあざといというのは聞いたことがあるけれど、凶器は初めて聞いた。
「……はあ、なんで振られるんだか」
「歴代彼女さんからは、別れ話が出た時に何か文句言われなかったの?」
「言われてたらすでに是正してる」
「それもそっか」
なんて、駄弁っていたところ。
ブブ、と微かなバイブ音が、机を揺らした。
「あ、ごめんね。親が迎えきたみたい」
「……花穂さんって、送迎してもらってるんだ」
「普段は徒歩なんだけど、今日はちょっと寄るところがあって。都裄くんは?まだ帰らない?」
スマホをしまいながら立ち上がって、いまだ座ったままの都裄くんを見下ろすと。
数秒の沈黙、のち。
「……僕も帰る」
雑にスクバを取って、私の机に置いていた教室の鍵を乱雑に掴んだ。