ロマンスにあけくれる



がちゃり、と鍵を回して、2年の教室が並ぶ廊下をふたりで歩いていた時。



「……ねえ、花穂さん。ほんとに僕と付き合ったりしない?」

「え?」



ゆらゆらとスクバを片手で揺らしていたところにそんな言葉を落とされて、反射的に都裄くんの顔を見上げた。

結構キザなセリフを吐いた都裄くんはというと、至って平然な顔をして歩いている。


わたしの、目を見たまま。



「……その心は?」

「花穂さんなら、僕が彼氏としてダメなところを随時指摘してくれそうだから」

「…………、それって彼女って言っていいのかな?」

「友人よりも、恋人の方が一緒にいてとやかく言われないでしょ。何せ高嶺の花と道端に転がってる石だし」

「あはは。思ってないくせによく言えるね?」

「……これがここの生徒の共通認識なんだよ」



少し皮肉をこめた笑みを向けると、ちょっと眉を顰められてしまった。

さっき散々わたしに嫌味を吐いた分のお返しだと思って聞き流してほしい。


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