ロマンスにあけくれる
黒と青のチェック柄のハンカチをおそるおそる受け取って、これまたおそるおそる自分の髪の毛にあてていく。
「明日、洗って返します……。いや、クリーニングに出したほうがいい……?」
「花穂さんは僕に対して一体どんなイメージ持ってんの?」
「……えっと、ガチギレさせたらすごく怖そうな人、かな?」
「………僕、やさしくしてるつもりなんだけど」
「エ゛ッッッッッ」
髪を拭いていた手が止まったし、なんなら人間に出せないような潰れた声が出てしまった。女子にあるまじき声だったとは自分でも思う。
「だって、好きになってもらうには優しくするのが定石でしょ」
「……や、やさしさに、すごい打算が隠れていた」
「無償の愛もやさしさも僕はあげるつもりはないよ」
「そういうところじゃないかな、彼女に別れ告げられるの……」