ロマンスにあけくれる



もはや毒舌と呼んで然るべきな刺々しい口調。

ただ、あまりそれらが響かないのがわたしである。



「……それで、都裄くんの方はどうしたの?さっきからずっと机漁って」

「花穂さんには関係ないので」

「いやでも、探し物してるなら聞き込みした方が後々効率いいと思うけど」



思わずド真面目に返してしまうと、都裄くんはぴたりと手を止めて、数秒、のち。



「……スマホがなくて」



悩ましげにそんな言葉を落とした。


その事実に目をぱちくりさせて、ゆっくりと机の隅に手を伸ばす。

だって、なんともタイムリーなことに。



「えっと……もしかして、これ、探してた?」



そのスマホを、わたしが所持しているという奇跡的な偶然が発生していたから。


机の隅に置いていた、真っ黒なカバーがかけられたスマホを手に取ると、わずかに都裄くんの目が見開かれた。



「……なんで花穂さんが、僕のスマホを?」

「え、拾ったから」

「……どこで、」

「ここで」



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