稼げばいいってわけじゃない
第4話
「寝た?」
晃は、2階から降りてくる絵里香に声をかける。
ようやく2人はベッドですやすやと寝たようだ。
未だに小学2年生でも1人で眠れないようで、寝るまで絵里香は添い寝してその日の話を聞いたり、絵本を読んだりして寝かしつけしていた。
「うん、やっとこそね。本当、今日はどうなることかと思ったよ。」
絵里香は壁につけたバースデー風船を外し始めた。その様子を見て、晃も一緒に手伝った。
「あれにはびっくりだよな。ケーキのイラストに文句言うとは思わなかったよな。でも、プレゼントには満足してたんじゃないの?」
「誕生日って、それだけで嬉しいもんだと思うけど、あの子らは違うんだね。少しでも満足できないと文句出ちゃうんだ。羨ましいよ。私なんて、買ってきたものに文句一つ言えなかったから。」
「時代で違うんじゃないの?物に溢れてるからさ。絵里香は我慢してきたんだな。そういう俺も満足はしてなかったかも…。」
ゴミ袋にクラッカーのゴミを入れ始めた。
「ねぇ、あのさ、誕生日くらい、もっと早く帰って来られないの?私なんて、準備あるから仕事休みにしたんだよ。この料理とか、ケーキ注文したもの取りに行くとかさ。」
「…これでも頑張って残業をしないようにしてきたつもりだよ。仕方ないだろ。分かっているよ、誕生日だってことくらい。勘弁してよ、無事終わったのにそうやって言うの。」
「……だって、大変だったから。あの子達は一切準備を手伝ってくれないし、1人で黙々とこれ壁につけてさ、唐揚げ揚げて、サラダ作って…車で20分かけてケーキ取りに行って。車の中で何回も2人は喧嘩するし、やめないし。挙げ句の果てにこのケーキじゃないとか言うし。」
泣きながら発狂する絵里香。ただでさえ、仕事でもストレスがたまっているし、子どもの相手しながら、誕生日の準備を1人でして、感謝もされずに終わる1日が悔しかった。塁は、ケーキに駄々こねるし、プレゼントは喜んでいたが。
「悪かったよ…。絵里香も頑張ってたんだな。ごめんごめん。」
ぎゅっと体に寄せて頭を撫でた。
「そんなことされても嬉しくない!!」
「嬉しいくせに。」
「違うよ。私ばかり頑張りたくないの。生まれた時に言ったじゃない。一緒に楽しく子育てするって、今は大きくなったと思って私ばっかりになっているのが嫌なの。寝かしつけだって、そう。今年になって私ばかりじゃない。あなたがやってくれてもいいんだよ。」
子どもの相手をするのはお金に変えられないもの。子育ての部分はいくら24時間保育所があるからってそこに預けたいわけじゃない。夫婦でしっかり子どもと向き合いたい。
赤ちゃんの時はずっと見てくれていた。
でも、今の年齢では、自分自身の育てられ方に嫉妬するのか放置することのほうが多くなっていた。
「う、うん。でも、俺、あの2人の年齢の時はすでに1人で寝てたから。添い寝されたことないし、もう大丈夫って思ってしまうんだよね。」
「あなたはそうだったかもしれないけど、あの2人は誰かがいないとダメって言うんだよ。絶対一緒に寝るって。ほら、実際、私との寝る回数多くなっているから、お母さんじゃないとダメになっているじゃん。せめて、土日のどっちかはやってよ。休みなんだから。」
「あ、ちょっと待って、なんで塁の誕生日からその話になっているの?話の論点ずれてない?」
「…ずれてない!! 子育てに関しては一緒だわ。毎日の不満がたまっているの。聞いてくれてもいいでしょう。」
「あぁ。わかったよ。考えておく。」
晃は台所からマグカップにコーヒーを注いでいた。毎度のことだが、1人分。絵里香の分は入れるということはしない。
「そうやってさ。いつもコーヒー入れるけど、たまには私に入れる?って聞いてもよくない?」
「あぁ、なんだ。飲むの?絵里香は寝る前のコーヒーはいらないって言うじゃん。」
「他にもあるじゃない。ホットミルクとかお茶とか。もっと考えてよ。ゲーム攻略ばっかりできるなら、私の扱い方も攻略しなさいよ!!」
「あー、はいはい。入れりゃいいのね。」
(結局、塁はお母さんに似てるんじゃないのか。文句すぐ言うしな。)
ブツブツ文句を言いながら、晃は冷蔵庫から牛乳を取り出して、レンジで温め始めた。ため息をつきつつ、絵里香は洗い物を始めた。
夜中の家事は、本当にやる気を失う。力が無くなっているのに追い風が来てる感覚だ。
スポンジに洗剤を3プッシュして泡立てて、皿を洗い始めた。
横で晃が乾いたであろう、食器を食器棚に運び入れてくれた。
言わずともやってくれることは感謝するけど、家事というものはそれだけでは無いんだぞと訴えたい。
気が向いたときにしか手伝ってくれない。これが毎日あることを忘れている。世の中のお父さんというのは、稼いでくればいいというのではない。共働きが増えてきて、むしろ女性の方が稼ぎがいいところもある。
それを、俺の金で飯食べるなよというのは禁句の何ものでもない。
家事というものは給料が発生しないが、やらなくてはいけないもの。
洗濯は服を着れば、たまるし、部屋は散らかるし、腹は減る。
お金のことを言うならば、次からうどん、そうめん、そばは、乾麺しか食べるなよと言いたくなる。
ご飯だって炊かないで米をむさぼれって言いたくなる。
夫婦喧嘩はどこまでも続く、洗濯したくないなら、裸で過ごせとか、毎日同じものを着ろとか、部屋は物を増やすなとか屁理屈ばかり。
そういうことじゃないだろう。
折り合いつけて、担当制にしたりして、やらなきゃないだろう。
1人暮らししていたら、やらないでいいこともあるかもしれないが、子どももいるし、嫁もいる。
家族というくくりができているのだ。
将来の子どもの生活にも関わるから、洗濯の仕方も教えないといけないし、料理の仕方、掃除の仕方。
毎日しなくてもいいものもあるが、ある程度は家事は一定に保って回さないといけないと感じる。
学校や幼稚園の持ち帰ってくる上靴、運動着、給食着、スモックや帽子。それさえも、簡単だろと思うかもしれないが、洗濯機の中で給食着の帽子が行方不明になり、学校にご迷惑だってかけることもある緊張する家事の部分だ。
上靴だって真っ黒やボロボロにしてたら、買ってもらえない貧乏なの?とか思われるかもしれない。
家事の全てが給料が発生しない事案を晃はどう思っているのか。
絵里香が具合悪くしていたら、父親として代わりにやらなきゃいけないものだ。
ただ単に仕事してればいいわけじゃないんだ。家のことを見つめ直してほしいものだ。
絵里香はいつも晃に愚痴るが、都合のいいように解釈されて終わる。
男ってずるい生き物だ。
晃は、2階から降りてくる絵里香に声をかける。
ようやく2人はベッドですやすやと寝たようだ。
未だに小学2年生でも1人で眠れないようで、寝るまで絵里香は添い寝してその日の話を聞いたり、絵本を読んだりして寝かしつけしていた。
「うん、やっとこそね。本当、今日はどうなることかと思ったよ。」
絵里香は壁につけたバースデー風船を外し始めた。その様子を見て、晃も一緒に手伝った。
「あれにはびっくりだよな。ケーキのイラストに文句言うとは思わなかったよな。でも、プレゼントには満足してたんじゃないの?」
「誕生日って、それだけで嬉しいもんだと思うけど、あの子らは違うんだね。少しでも満足できないと文句出ちゃうんだ。羨ましいよ。私なんて、買ってきたものに文句一つ言えなかったから。」
「時代で違うんじゃないの?物に溢れてるからさ。絵里香は我慢してきたんだな。そういう俺も満足はしてなかったかも…。」
ゴミ袋にクラッカーのゴミを入れ始めた。
「ねぇ、あのさ、誕生日くらい、もっと早く帰って来られないの?私なんて、準備あるから仕事休みにしたんだよ。この料理とか、ケーキ注文したもの取りに行くとかさ。」
「…これでも頑張って残業をしないようにしてきたつもりだよ。仕方ないだろ。分かっているよ、誕生日だってことくらい。勘弁してよ、無事終わったのにそうやって言うの。」
「……だって、大変だったから。あの子達は一切準備を手伝ってくれないし、1人で黙々とこれ壁につけてさ、唐揚げ揚げて、サラダ作って…車で20分かけてケーキ取りに行って。車の中で何回も2人は喧嘩するし、やめないし。挙げ句の果てにこのケーキじゃないとか言うし。」
泣きながら発狂する絵里香。ただでさえ、仕事でもストレスがたまっているし、子どもの相手しながら、誕生日の準備を1人でして、感謝もされずに終わる1日が悔しかった。塁は、ケーキに駄々こねるし、プレゼントは喜んでいたが。
「悪かったよ…。絵里香も頑張ってたんだな。ごめんごめん。」
ぎゅっと体に寄せて頭を撫でた。
「そんなことされても嬉しくない!!」
「嬉しいくせに。」
「違うよ。私ばかり頑張りたくないの。生まれた時に言ったじゃない。一緒に楽しく子育てするって、今は大きくなったと思って私ばっかりになっているのが嫌なの。寝かしつけだって、そう。今年になって私ばかりじゃない。あなたがやってくれてもいいんだよ。」
子どもの相手をするのはお金に変えられないもの。子育ての部分はいくら24時間保育所があるからってそこに預けたいわけじゃない。夫婦でしっかり子どもと向き合いたい。
赤ちゃんの時はずっと見てくれていた。
でも、今の年齢では、自分自身の育てられ方に嫉妬するのか放置することのほうが多くなっていた。
「う、うん。でも、俺、あの2人の年齢の時はすでに1人で寝てたから。添い寝されたことないし、もう大丈夫って思ってしまうんだよね。」
「あなたはそうだったかもしれないけど、あの2人は誰かがいないとダメって言うんだよ。絶対一緒に寝るって。ほら、実際、私との寝る回数多くなっているから、お母さんじゃないとダメになっているじゃん。せめて、土日のどっちかはやってよ。休みなんだから。」
「あ、ちょっと待って、なんで塁の誕生日からその話になっているの?話の論点ずれてない?」
「…ずれてない!! 子育てに関しては一緒だわ。毎日の不満がたまっているの。聞いてくれてもいいでしょう。」
「あぁ。わかったよ。考えておく。」
晃は台所からマグカップにコーヒーを注いでいた。毎度のことだが、1人分。絵里香の分は入れるということはしない。
「そうやってさ。いつもコーヒー入れるけど、たまには私に入れる?って聞いてもよくない?」
「あぁ、なんだ。飲むの?絵里香は寝る前のコーヒーはいらないって言うじゃん。」
「他にもあるじゃない。ホットミルクとかお茶とか。もっと考えてよ。ゲーム攻略ばっかりできるなら、私の扱い方も攻略しなさいよ!!」
「あー、はいはい。入れりゃいいのね。」
(結局、塁はお母さんに似てるんじゃないのか。文句すぐ言うしな。)
ブツブツ文句を言いながら、晃は冷蔵庫から牛乳を取り出して、レンジで温め始めた。ため息をつきつつ、絵里香は洗い物を始めた。
夜中の家事は、本当にやる気を失う。力が無くなっているのに追い風が来てる感覚だ。
スポンジに洗剤を3プッシュして泡立てて、皿を洗い始めた。
横で晃が乾いたであろう、食器を食器棚に運び入れてくれた。
言わずともやってくれることは感謝するけど、家事というものはそれだけでは無いんだぞと訴えたい。
気が向いたときにしか手伝ってくれない。これが毎日あることを忘れている。世の中のお父さんというのは、稼いでくればいいというのではない。共働きが増えてきて、むしろ女性の方が稼ぎがいいところもある。
それを、俺の金で飯食べるなよというのは禁句の何ものでもない。
家事というものは給料が発生しないが、やらなくてはいけないもの。
洗濯は服を着れば、たまるし、部屋は散らかるし、腹は減る。
お金のことを言うならば、次からうどん、そうめん、そばは、乾麺しか食べるなよと言いたくなる。
ご飯だって炊かないで米をむさぼれって言いたくなる。
夫婦喧嘩はどこまでも続く、洗濯したくないなら、裸で過ごせとか、毎日同じものを着ろとか、部屋は物を増やすなとか屁理屈ばかり。
そういうことじゃないだろう。
折り合いつけて、担当制にしたりして、やらなきゃないだろう。
1人暮らししていたら、やらないでいいこともあるかもしれないが、子どももいるし、嫁もいる。
家族というくくりができているのだ。
将来の子どもの生活にも関わるから、洗濯の仕方も教えないといけないし、料理の仕方、掃除の仕方。
毎日しなくてもいいものもあるが、ある程度は家事は一定に保って回さないといけないと感じる。
学校や幼稚園の持ち帰ってくる上靴、運動着、給食着、スモックや帽子。それさえも、簡単だろと思うかもしれないが、洗濯機の中で給食着の帽子が行方不明になり、学校にご迷惑だってかけることもある緊張する家事の部分だ。
上靴だって真っ黒やボロボロにしてたら、買ってもらえない貧乏なの?とか思われるかもしれない。
家事の全てが給料が発生しない事案を晃はどう思っているのか。
絵里香が具合悪くしていたら、父親として代わりにやらなきゃいけないものだ。
ただ単に仕事してればいいわけじゃないんだ。家のことを見つめ直してほしいものだ。
絵里香はいつも晃に愚痴るが、都合のいいように解釈されて終わる。
男ってずるい生き物だ。