旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「だからって、そんなことある? え、美咲もちゃんと最初から旦那さんのこと好きだったんだよね?」
「当たり前じゃん。なんならお見合いの日に大分好きになってた。プロポーズされたときにはもう完全に惚れてたし……」
「まあ、好きじゃなかったらプロポーズ受けるわけないか。うーん、他の言葉で伝えてたわけではないの?」
「うん、言ってないと思う。一緒にいれて嬉しいとか、そういうのは伝えてるけど、好きは言ってない。だって、好きって言うとこ想像したら、もうわーってなる。でも、今までそうなったことないから絶対言ってない……もうダメダメすぎる……」

 今その言葉を聡一に伝えるところを想像しただけで、心臓がドクドク言いはじめている。こんな状態になるなら、絶対に覚えているはずだ。だが、いくら振り返ってもそんな記憶はないから、やはり美咲は聡一に好きだと告げてないのだ。こんなにも好きだというのに。いくら初心者とはいえ、情けなさすぎる。

「まあ、美咲の気持ちは十分伝わってると思うけどね。あんたわかりやすいから。てか、別に今からでも言えばいいじゃん」
「そうだね、さすがに言わないと……はあ……でも、めちゃくちゃ緊張しそう。現時点で心臓がヤバい」
「美咲。変に気負っちゃだめだからね。じゃないと美咲は逆戻りしそうだから」
「うん。気をつける……」
「まあ、とりあえず旅行を素直に楽しんでおいでよ。折角の新婚旅行なんだからさ」
「そうだね。私も聡一さんと楽しく過ごしたい」

 千佳の言葉で少しだけ緊張がほぐれた。できるだけ早く伝えるべきだとは思うが、緊張しまくっていたら聡一に心配をかけかねない。旅行に支障が出るのも嫌だ。そもそもその言葉を言うことが目的なのではなく、美咲の想いを伝えることが重要なのだ。千佳の言う通り変に気負わず、自然に伝えられる状態を目指そうと美咲は思った。


 そんなわけで美咲はキスと好きの二つの課題を抱えたわけだが、一つ目の課題にはまったく予想もしない展開が待っていた。
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