旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「美咲さん。あなたの唇へキスしてもいいですか?」
「……はい」

 美咲が熱のこもった声で返事をすると、聡一がそっと美咲の頬に触れてきた。そのまま数回頬を撫でられ、その手が頭の後ろまで回り込む。聡一の顔がゆっくりと近づいてきたから、それに合わせて目を閉じると美咲の唇に初めての柔らかい感触が舞い降りてきた。

(すごい。全然違う。触れる場所が唇になっただけなのに。身体まで痺れそう……幸せ)

 とんでもない幸福が全身を駆け巡り、指先までピリピリとしている。嬉しくて、気持ちよくて、このままずっと味わっていたくなる。離れてしまうのが嫌で大人しくじっとそれを受け入れていた美咲だが、聡一はほんの数秒でその触れ合いを終わらせてしまった。

 唇が離れ、聡一と目を合わせれば、いつもの優しい微笑みを向けられる。その微笑みはいつもと変わらないのに、尊すぎて少し遠くに感じていたその存在が、今はもうすぐ目の前に感じられた。この人は本当に自分の夫なのだと、彼に触れてもいいのだとそういう実感が湧いてきて、聡一に触れたい欲がとめどなく溢れてくる。その欲を逃がしきれなくて、美咲がじっと聡一を見つめていれば、聡一は少しだけ心配そうに問いかけてきた。

「平気ですか?」

 すぐにこくりと頷き、大丈夫だという意思を示す。そして、もっと触れ合いたいと聡一を熱く見つめていれば、聡一は美咲の欲しい言葉をすぐに与えてくれた。

「もう一度しても?」

 美咲はその問いに頷くと、今度は自分から顔を寄せてその口づけを迎えにいった。二度目の口づけも美咲にこの上ない幸福をもたらしてくれる。美咲は今度はしっかりと味わいたくて、聡一の服を掴み、縋りついていた。だからなのかどうかわからないが、聡一は先ほどよりも少しだけ長い口づけを与えてくれた。
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