旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「美咲さん。まずは旅行をめいっぱい楽しみましょうか。心配事はもう消えたでしょう?」

 どうやら新婚旅行でキスしようと意気込んでいたのがばれているようだ。

「……聡一さん。やっぱりわかってたんですか?」
「あなたは素直でかわいいお人ですから」
「はあ、すぐばれる……その……私も、したかったんです。だから、新婚旅行でって……」
「うん。頑張ろうとしてくださったんですね。ありがとうございます。美咲さんのその気持ちがとても嬉しいですよ」
「はい……キス、私のためにしてくれたんですね」
「それだけではありませんよ。私もあなたとこうなることを望んでいたんです。口づけたかったと言ったでしょう?」

 聡一から欲を見せつけられるたびに、嬉しくて鼓動が速くなる。

「はい……じゃあ、今日だけじゃない?」
「そんな心配は不要です。一度触れたらもう止められません。何度だって求めたくなりますから」
「今も?」
「はい。今も」
「あの……私もなんかおかしくなってて、心臓すごいのに、苦しいのに、もう一回したくなるんです」
「よくわかりますよ。私の胸に耳をあててみてください」
「あ……」

 聡一の心臓も強く速く脈打っているのがわかる。聡一の表情はいつもと大して変わりないが、ただ表に出していないだけのようだ。

「ね? 速いでしょう?」
「はい」
「それでも美咲さんとキスしたくてたまらない」
「私も」
「もう一度口づけていいですか?」
「はい」

 二人はもう一度キスを交わした。ドキドキは止まらないのに幸せが満ちていく。ほんの数秒触れあわせているだけなのに、心がどんどん満たされる。信じられないくらいに二人の距離が近づいたのがわかる。聡一が言った通り二人は大事な一歩を踏みだしたのだろう。二人の仲もこれから急速に深まっていきそうな、そんな予感さえした。
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