旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 美咲は初日から聡一が帰ってこないという状況が落ち着かなくて、家でずっとそわそわとしていた。聡一が電話をくれると言ったから、携帯ばかり気にしてしまって、趣味を楽しむ余裕すらない。結局携帯を持ってじっとしていたから、聡一からの電話に美咲はワンコールの勢いで出ていた。


『美咲さん、こんばんは』

(聡一さんの声、好きすぎる。ちょっとセクシー。至高のASMRだ)

 電話越しに聞く聡一の声はいつもより少しだけ低く感じられてなんだか色っぽい。

『こんばんは、聡一さん』
『なんだか電話で話すのは新鮮ですね』
『はい。ちょっとくすぐったいような感じがします』
『そうですね。でも、あなたの声が耳に伝わってくるのが心地いいです』
『私も同じこと思ってました』
『ふふ、気が合いますね』
『はい。あの、聡一さん疲れていませんか? 今日結構移動長かったですよね?』

 疲れているのを無理して電話してくれていないかと美咲はちょっと心配になっていた。

『心配してくださっているのですか? 大丈夫ですよ。ありがとうございます。あなたの声を聞けば疲れも癒えますから』
『またそんなことを……』
『本当ですよ。ですから、もっと声を聞かせてください』
『はい』

 美咲はその日の出来事を話して聞かせ、今度は聡一にも話をねだった。もっと聡一の声を聞きたかったのだ。二人はたわいもない話を一時間続け、おやすみなさいと告げてから通話を終了した。電話が終わると途端に淋しくなる。これが一週間も続くのかと思い、美咲は思わずため息をこぼしていた。


 そして、それからの一週間、美咲は淋しさを紛らわすようにして、仕事のことを考えたり、プロポーズの計画を進めたりしていた。それからもう一つ、固く心に誓ったあることのために美咲は一人奔走していた。
< 141 / 177 >

この作品をシェア

pagetop