旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「あの、トラブルって何があったんですか?」

 電話口で中島はトラブルがあったと言っていた。聡一と中島の様子からして大きなトラブルではなさそうだが、やはり美咲はそのことが気にかかっていた。

「トラブルというわけではないですよ。子供を乗せたままの自転車が倒れそうになっているのを見つけて、思わず駆け寄って支えたんですが、そのときに壁に頭を打ち付けてしまったんです」

 なんとも聡一らしい理由だ。それが彼のいいところだとわかっているが、ちゃんと自分も大事にしてほしい。

「そっか。聡一さんらしいですね。でも、怪我には気をつけてくださいね」
「はい、気をつけます。あなたに心配をかけるのは心苦しいですから」

 聡一はとても申し訳なさそうな顔をしている。反省しているのだろう。さすがにそれ以上小言を言うことはできなくて、美咲は出張の話なんかを聞きながら自宅へと帰っていった。

< 144 / 177 >

この作品をシェア

pagetop