旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 店員の説明を受けて中に入るとそこかしこに猫がいる。恐るべき幸せ空間だ。美咲は猫から少しだけ離れた位置に座るとそこからニマニマと幸せの光景を眺める。すると横からクスクスという笑い声が聞こえてきた。

「すみません。美咲さんがあまりにかわいらしいもので」
「……かわいいのは猫たちですよ……」

 そう反論しても聡一はにこにことして同じ微笑みを向けてくる。それ以上見つめ合うのは恥ずかしくて、美咲は目をそらすようにして猫たちのほうへ視線を移動させた。


 美咲は自由気ままな猫たちを眺め、時にはおもちゃを使ってじゃらしたりしながら猫との時間を楽しむ。猫の姿を追うあまり、美咲はいつの間にやら聡一に少し背を向けるような形で座っていた。その状況に美咲はふと気づき、聡一はどうしているだろうと彼のほうを振り向いてみれば、なんと聡一は猫に取り囲まれていた。

(何これ! イケメンと猫最高かよっ! 尊い……)

 もはや天国だ。いつまでも眺めていられる。聡一はただじっとしているだけなのに、勝手に猫が寄ってきている。きっと猫にも彼の慈悲深さが伝わっているのだろう。

「写真撮ってもいいですか?」

 あまりに尊い光景に写真を撮りたいと告げれば、聡一は快く頷いてくれた。美咲は聡一と猫たちにスマホを向け、渾身の一枚を撮影した。

「かわいく撮れましたか?」
「ふふっ、はい。猫と戯れてる聡一さんかわいいです」
「え?」
「……え? ……あっ……あの、すみません。猫! 猫ですね。猫かわいいです!」

 どう考えても聡一は猫を指してかわいいと言ったはずなのに、美咲はうっかり聡一がかわいいと言ってしまった。慌ててごまかしたがきっとバレバレだろう。

「あはは。美咲さん、一緒に撮りましょうか」

 恥ずかしくて顔を俯けていたら、聡一は先ほどのことには何も触れずに、これまた嬉しい提案をしてくれた。そうして聡一と猫と一緒に撮った写真は大事な想い出の一枚になった。
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