旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「別にいいじゃない。何も恥ずかしいことなんて言ってないわよ。それに、私のその言葉がきっかけで、それならお見合いでもしますか? って話になったのよ。それはいいわねって、もう盛り上がっちゃって」
「本人抜いて盛り上がらないでよ……お相手の人もびっくりしたんじゃないの? 自分の目の前でそんな話されたら」
「それがねー、自分なんかでよければぜひって仰ってくれたの」

 その光景を想像して美咲はあり得ないと思った。二十代の男性が普通見合いなんてしたがるわけないと思ったのだ。

「ええ? それは変じゃない? 二十九の素敵な男性が、よく知りもしない女とのお見合い承諾するかな? その人なんか訳ありだったりしない?」
「あんた失礼よ……でも、まあ、確かにちょっと不思議ではあるのよねー。お見合いなんかしなくても十分おモテになるでしょうに。でも、ご本人曰く、お付き合いしてもすぐに振られてしまうそうなのよ。そんなふうにはまったく見えなかったんだけれどね」

 訳ありの匂いがプンプンする。どう考えてもあり得ない。恋愛漫画にあるような契約結婚みたいなものを迫られたりするんじゃなかろうかと、そんな変な妄想まで始めそうになる。だが、さすがに現実にそれはないだろう。何かしらの訳がありそうな気はするが考えてもさっぱりわからない。それに、単純に母を前に断れなかっただけかもしれない。この考えのほうがまだ現実的だろう。

「何かありそうな気はするけどね……それかお母さんたちの勢いがすごくて断れなかったんじゃない?」
「どうかしらね。でも、自分から事情を打ち明けてくださったし、誠実な方だと思わない? ほら、釣書くださったから、これに目を通すくらいはしてみない?」

 母から封筒を手渡された。見るだけなら別に何も問題はないかと美咲はそれを開き、中に入っている紙を取りだした。そして、そこに書かれている内容に美咲は我が目を疑った。
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