旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「美咲さん、こういう乗り物も平気なんですね。勝手なイメージですが、なんとなく得意ではないような気がしていました」

 言われ慣れたその言葉に美咲は思わず笑みをこぼした。インドア派なせいか、派手なアトラクションが苦手そうだとよく言われるが、美咲はむしろ爽快感があってこういう乗り物が好きなのだ。

「よく言われます。アクティブに動くタイプじゃないからですかね。でも、どういう乗り物でも平気ですよ」
「そうなんですね。意外な一面が知れて嬉しいです」
「聡一さんもあまりこういうのに乗るイメージないですね」

 聡一のほうこそそういうイメージがない。そもそも聡一と遊園地が結びつかないのだ。

「そうですね。確かにこういうところ自体、ほとんど来たことがありませんからね。たぶん学生の頃以来ですよ」

 美咲の想像は当たっていたらしい。やはりこういうところは苦手なのではないかと不安になってくる。

「こういう場所苦手じゃなかったですか?」
「ふふっ、心配してくださったのですか? ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。美咲さんとならどこにいても楽しいですから。今だって浮かれているくらいですよ」

 美咲は大きく目を見開いた。聡一が浮かれているようにはまったく見えない。彼はいつも通りの柔和な微笑みを浮かべている。

「ええ? 聡一さんが浮かれるなんて信じられません」
「恥ずかしいからそう見えないようにしているだけです。あなたの隣にいるときはいつだって浮かれています」
「聡一さん……」

 聡一の甘い言葉に驚きよりも恥ずかしさのほうが上回ってきた。まともに聡一の顔を見られなくて、美咲は頬を赤らめながら少しだけ顔を俯けた。
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