旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
「わっ、何これ……超ハイスペックじゃん」

 有名大学を卒業しており、勤務先も美咲ですら知っている大手企業。しかも、それに加えて百七十八センチの高身長ときている。テレビか何かで耳にしたことがあるが、これは古の3Kというものだろう。

「ねぇ、驚きよね。きっと引く手数多よ。こんなチャンス二度とないわよ? 中に写真も入ってるわよ?」

 封筒の中を確認すると確かにそれらしきものが入っている。それもそっと取り出し、確認してみる。すると、そこには信じられないものが写っていた。

「……噓でしょ……めっちゃイケメンじゃん……」

 とんでもないイケメンだ。こんな人が振られるだとか、知らない女とお見合いするだなんて、俄には信じがたい。

「でしょう? お母さんが結婚したいって言った気持ちわかるでしょ?」

 わかる。ものすごくわかる。スペックがいいだとか、イケメンだとかそういうのももちろんあるが、それ以上に美咲はその写真の表情に心奪われていた。写真の彼はとても柔和な微笑みを浮かべている。写真を見ただけなのに、確かにこの人は誠実な人なんだろうと、美咲の勘がそう告げていた。

「わかる……この人とお見合いしたい、かも……」

 自分で自分の言葉に驚いた。勝手にその言葉がこぼれ落ちたのだ。これまで好きになった人はいても、自分からアプローチしたことなんて一度もない。こんなふうに自分から望むのは初めてのことだった。

「あんた現金ね……」
「正直って言ってよ」
「……まあ、いいわ。じゃあ、美咲の釣書もあちらに送って、お見合いの日取りも決めるけどいいわね?」
「うん。お願いします」

 こうして、美咲とハイスペックイケメンとのお見合いが決定した。

 きっと相手は断れなかっただけだろうから、お見合いから先に話が進展するとは思っていなかったが、それでも美咲はこの人に会ってみたいと強くその気持ちを掻き立てられていた。
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