旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 母の提案から約三週間後、美咲は母と共にホテルラウンジに来ていた。


「さすがに緊張する。何か粗相したらって思うと怖い」
「美咲なら大丈夫よ。お母さんが保証してあげるから落ち着きなさい。それに楽しまなきゃ損よ」

 何とも心強い。どうして母親というものはこう肝が据わっているのだろうか。自分の将来を想像してもまったくこうはなれる気がしない。

「お母さんはすごいね。心臓交換してほしい」
「やだ、何言ってるのよ。そのうちあんたの心臓にも毛が生えるから大丈夫よ」

 それはそれでどうなんだろうと美咲は複雑な表情を浮かべた。

「あら、もういらしてるわ」

 母のその言葉で一気に緊張が増した。恐る恐る母の目線の先を見ると、確かにそこには写真で見たイケメンと、これまた大層美しいマダムの姿があった。

(やっば。生のイケメンの破壊力凄まじい……)

 写真の五割増しで輝いている。今も写真のようにとても柔らかい微笑みを浮かべて、親子で談笑している。そこには神々しいまでの空気が漂っていた。
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