旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
『千佳ー、言えない……』
『もう、なんでそう初心なわけ?』

 美咲自身、自分の初心さ加減が信じられない。きっと学生の頃だったなら、勢いで乗り切れたに違いない。けれど、こんな歳まで何の経験もなくきてしまったから、いろんな感情にからめとられて身動きできなくなっているのだろう。なんだかそんな自分が情けなくて、美咲は思わず謝罪の言葉を口にしていた。

『ごめん……』
『いや、謝んなくていいけど……うーん、ちょっと待って。何か考える』
『千佳……ありがとう、千佳。大好き』

 美咲は泣きそうになりながら、千佳に礼を述べていた。

『旦那さんにもそうやって素直に全部言えば、上手くいくはずなんだけどね……』

 千佳のごもっともな言葉に美咲は何も言うことができなかった。
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