旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
『いやだから、ハグしたら』
『そうじゃなくて! 何その下心見え見えなやつ……』
『だってそこに意味があるんだもん。わかりにくいんじゃなくてド直球のほうが伝わるんだから』

 一応理屈があってのことらしい。だが、さすがにそんな台詞は恥ずかしくて言える気がしない。

『いや、そんなの逆に言いにくいんだけど……』
『だったら、素直に言いなよ』
『えー……』
『ダメならオキシトシン! てか、オキシトシンだけでいいまである』
『え、いやどういうこと?』

 さすがに言っている意味がわからなくて、美咲はまた聞き返していた。

『あの人にはそれだけで伝わる気がする』
『ええ?』

 『オキシトシン』を『抱きしめて』に変換できるなんてどんな特殊能力だ。そんなことあるわけないだろうとツッコミたかったが、先に千佳が勢いよく詰め寄ってきたから、美咲は何も言い返せなかった。

『とにかく今日やってみて! 明日報告よろ!』
『は、今日!?』
『善は急げっていつも言ってるでしょ。じゃ、頑張って!』
『ちょっ、千佳!』

 千佳に何か言う前に電話は切れてしまった。

「えー……」

 美咲の戸惑いの声が部屋に響いたのだった。
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