旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 翌日、美咲は結果を報告するために、昼休憩中に千佳に電話をかけていた。

『本当にオキシトシンだけで伝わった……』
『ぶはっ、マジでオキシトシンだけ言ったんか!』
『テンパってそうなった……』
『じゃあ、ついに? ぎゅーされたんだ?』

 千佳から期待に満ちた声が聞こえてくるが、その期待には応えられない。美咲は重苦しいため息をついてから、真の結果を口にしたのだった。

『……されてない』
『え、なんで? 伝わったんでしょ?』
『うん……両手広げて「どうぞ」って言ってくれた。でも、いけなくて……「まだ怖いですね」って言われちゃった……』
『……なるほどね。美咲が怖がってるって思われたのか』
『たぶん……』

 あの発言は他の意味では捉えられないだろう。美咲が怖くて近づけないでいると聡一は思ったに違いない。

『じゃあ、これで確定でしょ』
『何が?』
『美咲が初心すぎて手出せない説』
『……確かに』
『つまりは美咲が望めば万事解決だよ』

 確かにあの流れから考えると、美咲がちゃんと勇気を出せていれば、聡一は美咲を抱きしめてくれたに違いない。やはり聡一は美咲のことを慮って、本当にゆっくりと進めてくれているのだろう。美咲さえ望めば先に進めるはずだ。

『……もう一回頑張ってみる』

 美咲は自分にも言い聞かせるようにして、その言葉を口にしたのだった。
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