旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 美咲と母は彼らのところまで歩み寄り、向かい合うようにして席に着いた。

「本日は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございます。仏坂聡一(ほとけざかそういち)と申します。どうぞよろしくお願いいたします」

 美咲はその話声を聞いてますます彼に惹かれた。ゆっくりと丁寧で落ち着いた話し方で、まったく威圧感がない。終始あの微笑みを浮かべており、後光すら差しているような気がする。そのままぽーっと見惚れそうになったが、美咲はすぐに我に返ると慌てて自分も挨拶を返した。

「こちらこそ素敵な場を設けてくださり、ありがとうございます。小野寺美咲と申します。本日はよろしくお願いいたします」
「まあまあ、かわいらしいお嬢さんね」
「本当に。とても素敵な方ですね」

(何この親子。慈愛オーラが半端ない……)

 親子共々優しいまなざしを向けてくる。恐れ多くて仕方ない。見合いが始まっても、美咲は恐縮しまくりで、なんとか母親に助けられながら、会話に参加していた。だが、見合いが始まって十分も経つと、俗にいう、あとは若いお二人で、が訪れてしまった。

「親がいたら話しづらいでしょうから、あとはもう二人に任せましょうか」

 美咲は母に縋るような視線を送ったが、そんな娘の視線には構わず、聡一の母と一緒にさっさと席を立ってしまった。折角緊張が和らいできていたというのに、これでは逆戻りだ。素敵な男性と二人きりの状況に、嫌でも鼓動が跳ね上がる。
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