旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 二人はカピバラのエリアに向かうまでに、他の動物もゆっくりと観察しながら歩いていった。美咲が気になる動物を見つけるたびに立ち止まるのだが、聡一はそれに自然と寄り添ってくれる。楽しみ方は人それぞれだろうが、美咲はこうやって二人でゆったりと見てまわれるのがとても嬉しい。横には素敵な旦那様がいて、目の前にはかわいい動物たちがいて、最高に癒される時間だ。


「聡一さん。見てください。ミーアキャット立ってますよ!」
「かわいい後ろ姿ですね」

 数匹のミーアキャットが美咲たちに背を向けて立ち上がっている。そのあまりのかわいさに、美咲は興奮して、空いている手で聡一の腕を握りしめていた。

「本当に、かわいい」
「ですね」

 同意して聡一のほうへ顔を向けたら、聡一が優しく美咲のほうを見つめていたから思わずドキッとした。気を落ち着けようと視線を少し下げたら、自分が聡一の腕を握っていることに気づき、美咲は慌ててその手を離した。

「もう離してしまうのですか? それは残念ですね」

 相変わらずストレートに伝えてくる聡一に美咲はたじたじだ。もちろん言われて嬉しくないわけではないが、人前では自重してほしいものだ。日差しのせいだけでなく顔が赤くなってしまう。美咲は照れを隠すようにして、次の場所へと聡一を促した。きっと照れていることなんて聡一にはお見通しなのだろう。聡一は横でクスクスと笑っているが、何を言っても敵わないことはわかっているから、美咲はせめてもの抗議に手をぎゅっと握って歩いた。
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