旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 大人の足で歩けば、そうかからずに次のエリアへと到着する。そこにはまた大層かわいい動物たちがおり、その姿に自然と顔がほころぶが、美咲はそこでなんとも羨ましい光景を目にしてしまった。

「美咲さん、ほら、あちらを見てください。とてもかわいらしいですね」

(なっ、イチャイチャしてる! バックハグじゃん。羨ましい……)

 聡一が指さした先には、一匹のワオキツネザルが別のワオキツネザルを後ろから抱きしめている姿があった。とてつもなくかわいい。だが、それだけではなくて、美咲はその姿が羨ましくて仕方ない。何しろここ最近美咲がずっと憧れているシチュエーションと同じなのだ。

 美咲たちはもう当たり前にハグができるようになったが、それは正面から立った状態で行っていて、いつも数分もすれば離れてしまう。美咲はもっと聡一と密着して、抱きしめて、抱きしめられての時間を楽しんでみたかったのだ。

「……いいな」

 そんな本音が思わず漏れ出る。幸い美咲のつぶやきは聡一の耳には届いていなかったようだが、羨ましさからか美咲は無意識に聡一にピタリと寄り添ってしまい、聡一に「どうしました?」と聞かれて、慌てて元の距離に戻ったのだった。
< 76 / 177 >

この作品をシェア

pagetop