旦那様は仏様 ~もっとイチャイチャしたいんです~
 二人はその後も様々な動物の姿を楽しみながら、ゆったりとその歩を進め、ようやく目的の場所までやってきた。

「カピバラだー。かわいい。癒されるー」

 そこには自由気ままに過ごすカピバラたちの姿があった。ゴロンと寝そべっていたり、むしゃむしゃと餌を食べていたり、気持ちよさそうに水浴びしていたりと、カピバラたちがのんびり過ごしている。美咲はそんなカピバラたちの姿をじっと眺めて、癒されていた。

「本当にお好きなんですね」
「はい。私もあそこに混ざりたいくらいです」
「それは妬けてしまいますね。私と似ているだなんて仰るから、すっかり彼らがライバルになってしまいました」

 いつも余裕そうにしている聡一からそんなことを言われるとくすぐったい気持ちになる。妬けるなんて言う聡一をちょっとだけからかってみたい気持ちがもたげるが、美咲はそれよりも彼に素直な気持ちを伝えて喜ばせたくなった。

「聡一さん……私が一番一緒にいたいのは聡一さんですよ?」
「……美咲さん。そんなにかわいいことを外で言ってはいけませんよ? 今すぐに連れ帰りたくなってしまいますから」
「聡一さん!」
「あはは。すみません、拗ねないで? あなたが真っ直ぐに伝えてくれることがとても嬉しいんです。ありがとうございます」

 真っ直ぐに伝えてくれることが嬉しいのは美咲も同じだ。こういうとき、聡一は真っ直ぐに目を見て、はっきり伝えてくれるから、美咲もその言葉を素直に受け取ることができるのだ。

 美咲が聡一の言葉に静かに頷くと、聡一はもう一度「ありがとうございます」と言って、微笑んでくれた。二人は温かい気持ちになって、仲良く寄り添いながら、もうしばらくの間カピバラを眺めて過ごした。
< 77 / 177 >

この作品をシェア

pagetop